閑話3 〜追憶の日々 -again【暁 Ver】
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要求と言う名の脅迫だった。暫し睨み合う二人。ゲヌイトが左右色彩の違う瞳を見据えていると、ティアナとスバルもやってきた。
「桐生候補生。一つだけ答えなさい。なぜだね?」
ヨハン・ゲヌイトの記憶が確かなら、桐生アスナと言う少女の戦う理由は飽く迄、自分の為だったはずだ。アスナは僅かに瞳を揺らしながら──── 答えた。ティアナとスバルが驚きで目を丸くするような、答えを。
「……たすけたい」
ゲヌイトはアスナの答えを聞くと、楽しげに唇の端を持ち上げる。少なくとも彼の認識の中で、初めて誰かを助けたいと願ったのだ。只、邪魔な物を叩き潰しながら暴れるだけだった少女が。
「いいだろう、行きなさい。但し、一つだけ条件がある。これが守れなければ許可するわけにはいかん」
「……なに」
ゲヌイトは一度だけ他の教官達や来賓席に視線を送ると、こう言い放った。
「一人残らず叩き墜とせ」
アスナはこくりと頷くと戦場へと飛び出していった。
「良かったんですか? 謹慎はあと一日残っていますが」
「そうだったかね」
ゲヌイトは何食わぬ顔をしながら左手首にある古めかしい腕時計に視線を落とした。
「昔、骨董品集めが好きな友人に貰ったんだが。最近調子が悪いのか日付が狂ってしまってな。それで勘違いしたようだ」
「……腕のいいお店を知ってますよ。あたしの兄がアンティーク蒐集が趣味だったので」
「そうか、偶然だな」
「はい、本当に」
お互いに目を合わすことなく。閑寂とした空気の中へお互いの息づかいだけが白く溶けていく────
「あの、もしかして教官は」
「そら、始まるぞ」
「サンタ、さん?」
何時倒れてもおかしくないような有様だった彼女の前に立った桐生アスナを見て彼女の口から紡がれたのは、そんな場違いな言葉だった。
「……ちがう。サンタなんていない」
「いますよ。今、ボクの目の前にいます」
アスナはなにも答えず右腕を横へ突き出すと、そのまま彼女の周りをくるりと一周した。彼女がきょとりとしているのも構わず淡々と告げる。
「……ここから動かないで。それと……『これ』かりる」
アスナは彼女の答えを待たずに腕に巻いてあるリボンをしゅるりと解くと、自分の腕に巻き付けた。
「なんだ、なんだ? もう一人出てきたぞ」
「ルール上は二人までの交代は認められてるからいいんじゃないか」
「僕は可愛い娘なら何人でもいいけど」
「おまえ、それが目的だろ」
「当たり前じゃないか。こんな山の中にわざわざ来たんだから、それくらいの役得はないと。それに父さんから許可は貰ってるしね。適当に遊んで帰
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