閑話3 〜追憶の日々 -again【暁 Ver】
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らく、『空士』の中に身内がいるのだろう。一様に締まらない表情を浮かべている教官達の中で、唯一人。ティアナにも負けないほどの不機嫌そうな表情を浮かべながら空を睨み付けている男がいた。見学の生徒達に苛立ちながら人垣を掻き分けるようにティアナは彼に近づいていった。
「ゲヌイト教官」
「……なにかね」
「あれはどう言うことでしょうか? 失礼ですが、名前も知らない生徒達です。何より……なぜ、編入したばかりの彼女がいるんですか?」
「選抜のメンバーに関しては知らん。……メンバー選出の為の会議連絡が偶然私には届いておらず、選抜会議も偶然私が休暇中の時に行われ、決まったらしい。偶然とは恐ろしいものだな」
そう言いながら、ヨハン・ゲヌイトは他の教官達を睨み付けた。睨み付けられた教官は居心地が悪そうに目を逸らす。ティアナが更に抗議しようと口を開きかけた時、交流戦開始を告げるサイレンが響き渡った。
「だめだ……」
ティアナは独りごちる。『空を飛べる』という優位性を崩すためのシフト、戦い方がまるで出来ていなかった。陸士側のメンバーは開始早々に戦意を喪失し、足まで止まってしまった為に、いい的であった。だが、一人また一人と脱落していく中、孤軍奮闘している少女がいた。
銀髪と腕に巻いた深紅のリボンをひらひらと揺らしながら絶えず動き回る。動き回る相手に業を煮やしたのか空士の一人が、彼女を追い込むように近づいていく。その時。彼女は急に動きを止めると空士へと振り返り、にこりと笑った。瞬間、三本のリングバインドが空士を拘束する。
「やったっ、ティア」
「設置型のバインド……上手いけど、相手は一人じゃないのよ……」
耳を劈く──── 轟音。背後から砲撃されたのだ。誰もが終わりを確信する中……真白な雪と土埃が舞う戦場で、彼女はよろよろと立ち上がった。そして、足を痛めたのか右足を庇うようにして再度走り出した。
「どう見たって死に体じゃない。なんでそこまで」
──── 立派な魔導師になりたいんです
──── ボクを送り出してくれた両親や兄弟達が自慢できるような
ティアナが俯きながら奥歯を噛みしめ顔を上げた時。目の前を『臙脂色』が通り過ぎた。その人物はポケットに手を入れながら、ふらふらと教官席へと近づいていく。
悔しげに視線を落としていたゲヌイトの前に影が落ちた。何事かと顔を上げた彼の前には、本来ここにいてはいけない少女が立ち、感情の薄い瞳で見下ろしていた。
「……桐生候補生。なぜここにいる。自分の部屋へ戻りたまえ」
「……出る。じゃないと、かってに暴れる」
桐生アスナの口から出たのは拒否でも、受諾でもなく、
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