第百四十五話 安土築城その四
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「しかし最近右大臣は朝廷にもかなり贈りものをしておるな」
「はい、帝にも公卿の方々にも」
「まあよいがな。しかしじゃ」
「しかしとは」
「余をないがしろにしておるのではないのか」
ここでこう言うのだ、何処かひがむ顔で。
「将軍を」
「それはないかと」
「だとよいがな」
「朝廷を軽んじないということはよいことです」
細川は朝廷とも縁が深い、それでこう言うのだ。
「ですから」
「それはそうだがのう」
「ではこのことはよいということで」
「まあな」
義昭は憮然としながらも納得した感じだった、そして言うのだった。
「右大臣は贈りものが多くしかも豪奢だのう」
「やはりそれもです」
「八百八十万石か」
「左様です」
「動かせる兵は二十万を超えたな」
二十二万、朝倉と浅井の兵も入れてだ。
「大きいのう」
「まさに天下布武に近付いております」
「そうじゃな」
ここではまた憮然として応える義昭だった。
「もうどの家も圧倒しておるな」
「そうかと」
「では相手になる家はないか」
義昭は言いながらそうした家を探しもしていた、己の頭の中で。
「最早」
「それは」
細川は義昭の言葉に内心呆れた、何故なら最早幕府はその信長の庇護に完全にあるからだ。それでこうしたことを言うのにとてもだったのだ。
だが今はそのことを心の中に留めてそれで義昭の言葉を聞いていたのだ。義昭はそれに気付くことなく言っていく。
「ではどうすればよい」
「そのことは」
「お主でもわからぬか」
義昭は眉を顰めさせて細川に問うた。
「織田家をどうすればよいか」
「あの、それは」
「ええい、もうよい」
義昭は痺れを切らしてこう言った。
「ではな」
「あの、上様」
「下がれ」
細川に告げた、もういいとだ。それで細川も今は義昭に言うことなく彼の前を後にした。それからであった。
義昭は細川が目の前から去ってからだ、暫くは一人でいた。だがすぐに苛立たしげに左右を見てこう言った。
「おるか」
「はい、ここに」
「おります」
すぐにだ、空海と崇伝が出て来た。まるで影の様に。
そのうえで出て来てだ、こう言ってきたのだ。
「織田家のことですな」
「そして右大臣殿のことで」
「知っておろう、朝倉は降り浅井も織田家の下に入った」
己の前にそれぞれ横に並んで来た二人の僧に言うのだった。
「そしてさらに強くなったわ」
「はい、そのことですが」
「それで」
「前に何か言っておったのう」
二人の僧を見ながら問うた。
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