第四十七話 洋館ではその十二
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「それでだけれど」
「はい、今度は一体」
「何が」
「ジョシュワさんだけれどね」
その今は幽霊となっている彼のことになる、その話はというと。
「もう来ると思うよ」
「このお店の屋根裏からですか」
「来られるんですか」
「気配で感じてね」
それで来るというのだ。
「だからもうそろそろだよ」
「そうですか、それじゃあ」
「今度は」
二人もその彼と会うことに心構えをした、するとビクトルの横に。
白いシーツを頭から被り中には何もない真っ暗なものが出て来た、そして頭のところに白く光る二つの目だけがある。昔の西洋の映画に出て来る幽霊の様な姿だった。
その彼がだ、こう二人に言って来た。
「こんにちは」
「はい、こんにちは」
「はじまして」
「ふむ、慣れておるな」
幽霊は二人のあっさりとした挨拶を受けて述べた。
「わしがいきなり出てきても驚かんな」
「いや、もうわかってましたんで」
「ここに幽霊さんがおられることは」
「それにこの学園自体そうした人達が多いことも」
「それも知ってますから」
「だからか、そういえばな」
幽霊は二人の後ろで四人用の席に座るドラキュラ達も見て言う。
「伯爵達もおるしな」
「この学園のことはお聞きしてますから、もう」
「博士からも」
「あの博士はまだ生身だからのう」
生者であるというのだ。
「思えば長生きな御仁じゃ」
「何でも百五十歳以上らしいですね」
「明治維新の頃からの人ですよね」
「そうらしい、わしが日本に来たのは明治維新から少し経ってからで八条学園に入ったのは明治二十年頃だったか」
最早歴史の時代である。
「その頃にはもう大学におったからのう」
「それであの頃からあのお姿ですか?」
「仙人みたいな」
「その頃は違った」
流石に若き日は若い時の姿だったというのだ、博士にしても。
「普通にな」
「普通のお姿だったんですか」
「博士も」
「背も高かった」
その頃の博士は、というのだ。
「学生服に学帽、それにマントでな」
「昔の学生さんの格好だね」
幽霊の横からビクトルがこう言う。
「確か」
「うむ、まさにな」
「それって百年以上前だよね」
「そうだ、まだ西郷さんが生きていたか」
「いや、それだと相当昔じゃない」
一口に明治といっても長い、四十五年もある。唱和の六十四年には及ばないが長いことは長いのである。
その長い明治の最初の頃だとだ、ビクトルは聞いて言うのだ。
「有り得ないよ」
「そう断言出来るのか?」
「断言って?」
「あの博士について」
幽霊が言うのは博士のその特異性のことだった。
「あれだけの御仁について」
「ううん、そう言われると」
ビクトルも博士のことは知っている、それでだ
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