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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第39話 「帝国のグランドデザイン」
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舌打ちをした。
 テーブルに肘をつき、頬杖をついている。少し傾けた首。髪が頬にかぶさっていた。
 だがそれを気にした風もなく。なにやら考え込んでいる。

「しかし侵攻の意志は無いと明言したぞ」
「それを信用しているのか?」
「している。少なくともあの皇太子は、そんなところで嘘は言わんだろう。あれはそういう男だ」
「なるほど。……それはわたしも同意見だ」

 それは明言した言葉か、それとも皇太子の人物に対してなのか?

「なにを考えているんだ?」
「戦争の終わらせ方」
「終わらせ方?」
「あの皇太子は、戦後を考えている。この戦争が終わったあとの事を考え、それに沿って手を打っている」
「戦後か……」

 私には見えてこない戦後が、すでに見えているのか?
 そしてそのために手を打つ。
 一歩も二歩も先を行っている。
 恐ろしい男だ。

「だけど交渉の糸口は見えてきた。わたし達は戦争を止めることを提案していた。しかしそれだけではだめだったんだ。戦後どうするのか、それを提案しなくてはいけなかった」
「それが終わらせ方か……」
「そう、戦後帝国と同盟はどういう関係になろうとしているのか? そこを提案できないのであれば、あの皇太子は統一した方が良いと考えている」

 そうだな。どういう風になるのか分からないのであれば、自分で決められる方が良い。それがたとえ統一という形になっても。あの皇太子ならそう考えるだろう。

「あの皇太子は帝国を、どういう形に持っていこうと、考えているのだろうか?」
「立憲君主制」
「なに?」
「権威の象徴としての皇帝。そして権威と政治と経済の分離。一点集中型のシングルコアではなくて、トリプルコア。戦後帝国は三つの頭を持つようになる」

 ここまでは読めた。そう言ってホワンが頭を掻き毟る。
 あの皇太子、皇帝を帝国の重石代わりに使う気だ。とも言う。

「どういう事だ?」
「問題が起こったときは、皇帝という権威をもって是正する。しかし普段は政治にも経済にも関与しない。貴族と平民の議会の決議を持って帝国を運営する。これが帝国のグランドデザインだろう」
「なるほど政府の上位に位置はしているが、皇帝親政ではなくて、議会制を取り入れるつもりなのか? そして政府や経済の暴走を、強権を持って止める事の出来る存在。それが皇帝か……」
「あの皇太子ならば、それができる。そして暴君が現れたときは、議会で止めろと言っているんだ」
「よく読めたな」
「皇太子の動きを思い返していたら、気づいた。貴族院議会とか、平民の代表を選んだところとかな。統治者としての貴族。意見を述べる場を与えられた平民の代表者。軍関係に対する態度。帝国宰相ではあっても、帝国軍三長官を兼任していない。フェザーンもそうだ。その
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