狂った人形編
愛深き故に命奪う男
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れしか思いつかなかった。でも結果オーライだろ?」
『しかし、無惨だな……』
狂った人形の頭は取れ、左腕がちぎれていた。このザマだったらもう大丈夫だろう。そう思った時だった。
「クカ、クカカカ……」
笑い声が聞こえた。俺はその笑い声で一瞬震えてしまった。
恐る恐る後ろを見ると転がっていた頭が口を動かしていた。
「忘れたのかぁ? おれは狂った人形<マッドドール>だぜぇ……? 頭が取れてもまだ動けるっつーの!」
その横で頭と左腕の取れた人形が立ち上がる。
俺は思わず後ずさってしまった。
こんなになってもまだ立ち続けるのか……
「そんなに会いたいのか?」
「……あ?」
「そんなにその愛する女性とやらに会いたいか?」
「!? て、てめぇにそんなことを言われる筋合いはねぇ!! 」
初めて笑う以外の表情を見た気がした。
「人を殺してまでその人に会いたいのか?」
「黙れぇ!! 黙れ黙れぇ!!」
「その女性は本当にそんなことを願っているのか!?」
「……うるせぇ、黙れよ、」
狂った人形は急にしおらしくなる。
「分かってんだよ、それぐらい……でも、もう自分を止めれない、あいつに会いたくて仕方ねぇ、だから決めた、どんなことをしてもあいつに会うと、でも、お前には関係ないだろぉ!! お前に何がわかる!? 俺の何がわかる!? 苦しみがわかる!?」
「分からねぇよ!! だけどその為に千もの命を奪うのか!? そこまでして帰ったお前を彼女は受け入れてくれるのか!?」
「っ!! なにヒーローじみたこと言ってんだよぉ!! ヒーロー気取ってんならヒーローらしく、かっこよく俺を倒してみろよぉ!!」
「……この、このクソ野郎が!!」
俺と狂った人形、同時に動き出す。
狂った人形が繰り出した右手をグーで返す。当たりどころが良かったのか相手の指からゴキッと鈍い音が聞こえた。
「ク、キギィ…………!」
狂った人形は痛みのせいか甲高い声を出す。
そこにすかさず腹にパンチを入れ胴体をノックアウトさせる。そして頭に歩み寄る。
「すまんな、」
「な、なにが……」
「かっこよく倒そうと思ったがやっぱやめた。」
「グギッ……てめぇ……」
「償いはしっかりするんだな」
そういうと俺は狂った人形の頭をサッカーのシュートの要領で蹴り飛ばす。
「ウゴッ……」
その声が聞こえてから体も動くことはなく笑い声も聞こえることはなかった。しかし、
『せ……い……なぁ……』
そんな声が聞こえたような気がした。もうコイツは大丈夫だろう。
俺はなぜだかそう思いこの場を去った。
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