アインクラッド 後編
穹色の風
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閃光と轟音、そして耳をつんざく破砕音。それは、また一人のプレイヤーが世界から永遠にログアウトしたことを意味していた。
戦況は最悪だった。あまりにもインパクトのありすぎたボスの形態変化と仲間の死で走った動揺が抜けないうちに、今までとは別次元の機動性を見せたボスの攻撃によってさらに二人の前衛が死亡。ようやく現状を把握しだしたプレイヤー側は前衛をフォローして態勢を立て直そうとするが、それが整わないうちにボスにタンク部隊の壁を突破され、その先のアタッカー数人が被弾。命を散らした。
そして、プレイヤーの中の動揺は、その一瞬で恐怖へと変わった。制御しきれない恐怖の渦に飲み込まれたプレイヤーはパニックを引き起こし、ボス近くの比較的体力に余裕のあったはずのプレイヤーが、我先にと転移結晶で離脱した。目先の攻撃目標を失った仏像は、次なる獲物を探しつつ後衛に近付いていく。
「むん!」
このまま壊滅か……と、最悪の未来がプレイヤーたちの頭をよぎった瞬間。突如ボスの目の前に紅い光が割り込んだかと思うと、手に持った十字盾でボスの一撃を受け止めた。聖騎士・ヒースクリフだ。
彼は圧倒的な防御力とプレイヤースキルでボスの攻撃を受け止め、受け流し、たった一人で戦線を支え始める。
その間にアスナなど数人が必死に留まるよう呼びかけるが、既に恐怖に呑まれていたプレイヤーに届くはずもなく、逆にこれ幸いと一気に離脱していく。
気付けば、残っているのはヒースクリフとマサキ、エミ、アスナ、あの四人組と、残りたった十人未満という惨状だった。
「マサキさん……」
不安に押し潰されそうな声で、四人組の紅一点、アミが呟いた。他の三人も、どうすればいいのか分からず、困惑したような視線をマサキに向ける。
「……来てくれ」
マサキは一言だけ言うと、必死に統制を取ろうとしているアスナとエミの二人に駆け寄った。すると、こちらに気付いたアスナが厳しい顔で口を開いた。
「……この状態では、戦線を支えることは困難です。よって、現状での攻略は不可能と判断し、撤退します。あなたたちも、団長がボスを引き付けている間に脱出してください」
「だろうな。そう言うと思った。……だが駄目だ」
「え……!?」
まさか反対されるとは思わなかったのだろう。アスナが、そしてエミたちも揃って驚きの色を見せる。
「正気ですか!? 今撤退しないと――」
「今撤退したら、攻略組全体の士気が著しく下がる。「勝てない」という思いが刷り込まれ、ネガティブな心理状態でボスと向き合うことになる。そうなれば誰もが前に出ることを嫌い、連携面で大きな穴を抱えることになる。当然、勝算はかなり低くなるだろう」
「それは……」
「それに、軍の二の舞になることを嫌った攻略ギルドが、精鋭の攻略
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