アインクラッド 後編
穹色の風
[10/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
処かでそう思ってしまった。
あの頃みたいに、信じようとしていたのに。
あの頃みたいに、手を伸ばしたのに。
あの日みたいに、零れ落ちた。
あの日みたいに、遠くに消えた。
――『マサキ……ごめん……』――
――『穹色の……風……』――
一瞬にして頭と心を支配した“無意味”の三文字が、あの日の記憶を呼び起こして。
――だったら……繋がりなんて求めたって、何の意味もないじゃないか――。
やがてそれは、そんな一つの結論を導き出した。
「ハ……ハハッ……」
ふらふらと立ち尽くしたまま、マサキは笑った。
決めたような、捨てたような。
悟ったように、諦めたように。
ふと前を見ると、大剣使いの少年が何かを喚きながら大剣を振り上げていた。マサきは無言で構えると、《春嵐》で元の二倍まで引き伸ばした半透明の刀身を振り上げた。重みと威力が増した風の刃は、一寸の狂いもなく狙った場所に命中し、大剣を握る両腕を斬り飛ばした。突然遠心力から解放された大剣は、ハンマー投げの如く十メートル余りを飛んで石畳に突き刺さる。直後、それに巻き付いていた二本の肘から先が、少女と同じ末路を辿った。
「…………!」
急に攻撃パターンが変わったマサキにAIが困惑したのか、大剣使いの少年が慌てたように後ずさろうとした。マサキはそれを察知すると、敏捷値をフルに使って前方に跳んだ。身体を貫いていた槍から強引に抜け出した瞬間には下腹部が強めの違和感を訴えたが、そんなことはどうだっていい。
マサキは一瞬にして少年の背後に回りこむと、《荒神風鎖》を使って、今まさに飛びずさろうとしている脚の膝裏を押さえた。全く予想できていなかった場所に力が加えられ、体ごと後ろに倒れこむように大きく体勢を崩す。マサキは倒れこんでくる少年の襟を掴むと、勢いを利用して背負うようにして投げ飛ばした。体術スキル《風車》を受け、目の前で頭から落ちていく少年の首を、マサキは蒼風の一閃で切り裂いた。
「…………」
ポリゴンの欠片が雪のように降る中を無言で振り返って、マサキは残った槍使いを見た。視線の先で、少年が動かされるままに構えさせられる。顔には言いようのない恐怖が植えつけられていて、今の彼の状況をこれ以上ないほど克明に教えてくれている。
僅かの間をおいて、マサキが駆け出す。
少年がパニックを起こしながら槍を突き出す。
そして、それを容易く回避して懐に潜り込んだマサキが、目にも止まらぬほどの動きで刀を振るい、少年のHPを削り切った。
それからほんの少しして、数十メートル先で一際大きな破砕音と大歓声が響いた。
ふと見ると、呆然とした瞳でこちらを睨み続けるジュンと目が合った。
「何で……何で…
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ