アインクラッド 後編
穹色の風
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確信し、数ミリほどだった亀裂が大剣全体に広がっていった、その瞬間――!
――ガシッ。
「な……!?」
突如背後から伸びてきた腕が、蒼風を握る両手首を掴んだ。その途端、蒼風を包んでいたライトエフェクトが嘘のように消え失せる。手の動きを強引に抑え込まれ、《松涛》がキャンセルされたのだ。
ソードスキルがキャンセルされ、マサキに硬直が課せられる。その隙に大剣使いの少年はバックステップで距離を取り、手首を掴んでいた腕はいつしか両肩をがっちりと捕らえ、羽交い絞めの体勢に移っていた。驚きと焦りの表情を浮かべたマサキが首から上だけで振り返ると、やはりと言うべきか、ついさっき得物である片手剣を砕いた少女の顔がすぐ後ろにあった。
「クソッ……!」
毒づきながら、こうなるのなら、武器を壊した時点で麻痺させておくべきだった――、などという考えが頭をよぎるが、だからと言って状況が変わるわけでもない。
硬直が解けさえすれば、例え筋力値の差で押さえつけられていても上手く身体を捻れば拘束から抜け出すことは不可能ではない。その間に、大剣使いから一撃を浴びてしまうかもしれないが、一度なら喰らっても問題はない。マサキは即座に頭を切り替え、力の掛かり具合から抜け出すための動きを計算し始める。
だが、今が絶好の攻撃機会だと言うのに、大剣使いの少年は一向に仕掛けてこなかった。……まるで、何かを待っているみたいに。
「……まさか……」
その瞬間、マサキの顔に今までにない焦りが浮かび、頭に最悪のシナリオが流れた。途中だった計算が頭から抜け落ち、取って代わった焦燥感からマサキが振り返ると、自分を羽交い絞めにする少女の更に後ろに、一人の少年がいた。
カーソルは鮮やかな血色。ボスに身体を乗っ取られた三人のうちの一人。やがて彼が構えた槍の穂先を淡いライトエフェクトが包み始め――
「……せ……止めろ……!」
珍しく焦りが表面にまで滲み出た声だったが、その声が少年の動きを妨げることはなく。
「…………ッ!!」
少年は一気に距離を詰めると、手に持った槍を捻りながら突き出して。硬直と拘束で微動だにできないマサキの腹部を、羽交い絞めにした少女ごと貫いた。
異物を飲み込んだような違和感が下腹部に充満し、視界の隅に映るHPが滑らかに減っていく。やがてマサキのHP減少が、残り1ドットを残して止まった瞬間。
「嫌……死にたく……ない……!」
恐怖に歪んだ少女の顔が、ノイズがかかったように乱れる。
直後、うわごとのような断末魔をマサキの耳元で囁いて、少女の身体は砕け散った。
――ああ。またなのか。
ひらひらと舞いながら消えていく蒼い破片を焦点の合わない視線で眺めながら、マサキは心の何
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