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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
穹色の風
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けた。真紅のカーソルや時折耳に届く言葉の端々から、この行動が本人の意思によるものではないことは明らかだ。となれば、彼らは何らかの理由により身体の自由を奪われていることになるが……。
 首を刎ね飛ばそうと迫る片手剣を仰け反って避け、崩れたバランスを利用してバク転で距離を稼いだマサキは、脳内で記憶のアルバムを開いた。ボス戦が始まり、形態変化によって戦線が崩壊し、援護部隊が駆けつけた直後に一撃を喰らい、ぶつかった後逃げ遅れた三人組に正体不明の紅い光が降り注ぎ――

「あの時か……」

 原因に思い至ったマサキは、元々細い切れ長の瞳を更に細めて三人を睨んだ。この場合、一番確実な対処法は、この三人組の“排除”――要するに、殺害。今は三人全員がマサキに向かってきているからいいものの、散開されて前線に奇襲をかけられたりでもすれば、戦線は完全に混乱するだろう。しかも、相手は数分前までプレイヤーだった。攻略組と言えど、冷静に対処できる人間が、果たしてどれだけいることか。

――『……ず、ずっと憧れてましたッ!!』
――『だから、俺はマサキに立ち直ってほしい』
――『信じてあげてください。……マサキさん自身の、繋がりを求める心を』
「…………」

 握った蒼風が語りかけてくるかのように頭の中に流れ込んできた幾つもの言葉が、強制排除もやむなしとしたマサキの判断と衝突した。身体が一瞬強張り、突き出された槍への回避が遅れて肩口を浅く抉られる。

「嫌……こんな……助け……!」

 涙の混じった声が脳内でぐるぐると(めぐ)り、マサキの葛藤を更に激しく煽る。
 マサキは一瞬目を瞑ると、蒼風をぐっと握り締めて、
 引き抜いて、
 切り裂いた。
 ……横から突き出された、鈍色の片手剣を。

「え……?」

 武器の喪失を感知したAIの困惑か、あるいは操られている少女の“素”の反応か、戸惑うように硬直した少女の脇をすり抜けて、マサキは背後から振り下ろされた大剣の軌道から身体を逸らしつつ、HPではなく耐久値に対してダメージボーナスがかかる風刀技《松涛(しょうとう)》をその横っ腹に思い切り叩き付けた。瞬間、甲高い衝撃音がその場を駆け抜け、無骨な大剣に小さな亀裂がピシリと入る。
 相手の武器を潰すことで攻撃力を取り除き、前線に向かわれた場合の脅威度を引き下げ、その上で時間があれば麻痺毒などで拘束する。その間にボスを倒せれば、彼らが元に戻る可能性もまだ残っている。

「せあぁぁぁぁぁッ!!」

 遂にズキズキと悲鳴を上げ始めた脳をねじ伏せるように声を張り上げ、マサキは僅かな筋力値を振り絞った。その声に後押しされるかのようにして蒼風を握る両腕がぐっと押し込まれ、蒼い光を放ちながら徐々に大剣に食い込んでいく。

 ――いける。マサキがそう
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