暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
穹色の風
[7/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
凪》を発動させる準備をしつつも体の力を抜いたマサキは、戦列から一歩退いた場所で話している四人組に、ふとした違和感を覚えた。彼らはジュンの話を表面上は大人しく聞いているが、全員顔が俯き、微動だにしていない。ここで逃げ帰ることへの悔しさの類かとも思ったが、どうにも様子がおかしい。
 《夕凪》を使って今すぐに声を掛けに行くべきか、マサキが僅かに考えを巡らせた……その時だった。

 それまで大人しく話を聞いていた三人のうち正面の一人が、血の通った生物に見えないほどぎこちない、例えるなら、油の切れたロボットか操り糸が絡まった操り人形のような動きで、突然手を薙いだ。握られていた槍の穂先が、仄かな軌跡を残して宙を滑る。
 そして、棒切れのような腕が振り切られたその瞬間。ジュンの右腕が根元から切り落とされ、蒼い光を撒き散らして消えた。

「え……?」
「逃げ……ろ……」

 急転した状況についていけないジュンに追い討ちをかけるように発せられた、途切れ途切れの声。パニックで動けないジュンの前で、仲間だったはずの少年が槍を頭上に浮かぶ血飛沫色のカーソル――眼前の相手が“プレイヤー”ではなく“モンスター”である何よりの証――の更に上まで振り上げて――

「……ッ!!」

 それが振り下ろされる寸前、《夕凪》で硬直を解除したマサキはポーチの回復結晶を使うと同時に素早く腰元の投剣を放った。ヒュンッ、と空気を切り裂いて、淡い光を纏った刃が彼らに肉薄する。三人組はそれを察知すると、迫る投剣を容易くかわして迎え撃つようにこちらに駆けてくる。

「ウソだろ……? 何で……こんな……」
「身体が……嫌……嫌ぁ……っ!」

 この状況で一番厄介な“全員が散開して、ボスにかかりきりになっている前衛に後方から襲い掛かる”という戦術を取ってこなかったことにひとまず安堵したマサキは、次々に繰り出される攻撃を持ち前の素早さでかわしつつ、周囲の状況を確認した。脳が疲弊した今のマサキでは筋肉演算も《デュアル・キャスト》も使えないが、三人組の動きが精彩を欠いていて、かつ連携も取れていないためその程度の余裕はある。
 数十メートルほど先では、駆けつけた援護部隊がヒースクリフのもとでボスと激戦を繰り広げている。怒号に咆哮が飛び交う集団は、とてもこちらに人数を割ける状態ではなく、そもそもこの騒ぎに気付いていない者も多い。後方ではエミや先ほど残った僅かのプレイヤーがポーションによる回復を待っているが、まだまだHPが戻っておらず、また仲間割れというこの状況についていけずに立ち尽くしている者もいる。当然、増援など望むべくもない。

「お願い……よけて……」

 一通り周囲を見回したマサキは、身体を捻って突き出された槍を回避すると、今度は今まさに自分に刃を向けている三人組に目を向
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ