アインクラッド 後編
穹色の風
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た二人でボスと渡り合い続けるマサキを凝視しながら転移して行った。後にアインクラッド史上でも有数の激戦として知られることになる戦いの終焉を告げるカウントダウンは、今も刻一刻と時を刻んでいた。
「……ッ!」
もう幾度放ったのかすら分からない《嶺渡》で、マサキはボスを背中から斬りつけた。どうやら先ほど鎧を脱ぎ捨てた対価はかなり高いらしく、最初は殆ど減らなかったHPバーが今の一撃で目に見えて減少する。ボスのHPは残り一割を切り、もうこのまま二人で倒せてしまうのではというようにさえ見える。
「……っと」
残り連撃数が一になったマサキは、追撃してくる腕をかわしながら着地して、最後の一撃をわざと空振りした。こうすることで、回避機動を取りながら離脱することが可能になるためだ。
だが、それでも技後硬直まで消すことは出来ず、ここぞとばかりに頭上から雨あられの如く剣筋が降り注ぐ。そして、最初に振り下ろされた槍の穂先がマサキを捉える寸前、真紅の盾がその間に割り込み、神掛かった盾捌きでその全てを跳ね返す。
「……相変わらず、馬鹿げた防御力だな。少しくらい分けていただきたいものだ」
「なら私は、君の敏捷値を頂こうか」
今もなお断続的に殺到する攻撃を完璧に捌きながら、ヒースクリフは軽口を返して見せた。数多の攻撃を掻い潜ってボスにダメージを与えるマサキも流石だが、マサキが戦いやすいようにボスの攻撃を出来るだけ引き付け、マサキの硬直時には必ずフォローに回るヒースクリフも圧巻の一言だ。しかも、それだけの攻撃を受けながら、彼はHPを八割も残している。彼がアインクラッド最強と言われているのにも頷ける。
「さて……どうだね、マサキ君。まだいけるか?」
「ああ、問題ない。そろそろ、援護隊も到着する頃だからな」
ヒースクリフの問いに肯定で返しつつも、マサキの顔つきは若干厳しそうだった。それもそのはず、腕一本でさえそれなりの負荷が掛かる筋肉演算を五十本分、さらに《デュアル・キャスト》まで併用した状態の戦闘を、マサキはかれこれ三十分以上も続けているのだ。いくら彼の頭脳が超人的とは言え、限界はある。どんなに長くとも、あと五分持つか持たないか、といったところだろう。
だが、それは決して無謀な賭けではなかった。今マサキが言ったとおり、もういつ援護部隊が到着してもおかしくない時間帯なのだ。
そして実際に、その時はすぐにやってきた。《嶺渡》での攻撃に敵AIが慣れてきたことを感じて攻撃に使う技を《雪風》に変えたマサキの三撃目がボスの左足を捉えた瞬間。巨大な喊声を上げながら、数十人の軍団が部屋に駆け入ってきたのだ。既に限界間近だったマサキは、ボスの攻撃に全神経を傾けながら離脱を開始する。
――だが。
「マサキさん! 今行きますッ
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