アインクラッド 後編
穹色の風
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も知れないが、もちろんそう簡単に上手くいくほど茅場晶彦は馬鹿ではなかった。例え複数のイメージを同時に入力したとしても、発動するのはカーディナルが認識した一番強いイメージの技一つのみ。あるいは、一つ一つのイメージが粗ければそもそも技が発動しないことさえある。
……だが、しかし。複数のイメージを十分に、かつカーディナルが認識できないほど同レベルの強さで入力した場合にのみ。カーディナルは出力させる技を選ぶことが出来なくなり、結果、複数の技が同時に発動する。
無論、だからと言って即座に狙えるようなものではない。が、マサキはそれをやってのけた。マサキだけが、風刀にだけ使うことの出来るシステム外スキル、その名も《デュアル・キャスト》――。
「せあぁぁっ!!」
ボスの必死の攻撃をもかわして見せたマサキは、そのまま全速力で空を駆け抜け、蒼風を横薙ぎに振るいながら斬り抜けた。先ほどマサキを逃した腕たちが血眼になって追撃を始めたが、繰り出す攻撃は、まるでマサキを嫌うかのように悉く虚空を切り裂いていく。《荒神風鎖》で作り出せる風の強さは筋力値に比例するため、マサキが起こせる強さでは腕の動きを止めたりすることは出来ないが、横から煽ることにより僅かに軌道をずらす程度なら余裕で出来る。そして、マサキにはその僅かで十分だった。
スキルと技、スピードで相手の攻撃を回避、撹乱しつつ、手札の多さと敏捷性で一方的に攻撃する、変則的高速高機動型三次元戦闘。それが、《穹色の風》マサキの真骨頂なのだ。
「すげぇ……」
「あれが……穹色の風……」
マサキの圧倒的とも言える戦闘を前に、ジュンたちは次々に賛嘆の声を口にした。長い間憧れていた人物が必死に戦う姿に、尊敬と、自分たちだけが逃げ帰ることへの後ろめたさが同時に沸き上がってくる。確かにマサキの言うとおり、自分たちの実力ではあのボスと対峙することは難しいし、援護隊に状況を伝えることも重要な役割だろう。今この間にも、援護隊はこの部屋を目指そうとしているのだ。ぐずぐずしていたら自分たちの転移より先に出発してしまいかねない。
「……なあ、ジュン」
そして、刻限と感情の狭間で迷った末、彼らはマサキの命令を半分《・》だけ破った。
「……俺たちは三人でここに残る。ジュンは一度帰って、援護隊に状況を伝えるんだ」
「そんな!?」
「違うんだ、ジュン。確かにジュンは一度帰るけど、それで終わりじゃない。援護隊に状況を伝えたら、一緒に戻ってくるんだ。俺たちはここでそれを待って、エミさんたちと一緒にボスに最後のとどめを刺す。これなら、俺たちにも出来るはずだ」
「皆……分かった。俺、行って来るよ。――転移! アルゲード!」
ジュンは真剣な顔で頷くと、たっ
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