アインクラッド 後編
穹色の風
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苦悶の叫びを上げた。手痛い一撃を喰らわせた相手を睨みつけ、硬直中のマサキにを葬ろうと、自身の持つ半分、数にして二十五本もの振り上げる。
だが、マサキは死を恐れていないかのように獰猛に笑うと、《夕凪》で硬直をキャンセル。脳の回転速度を一気に跳ね上げた。ボスが持つ腕すべての筋肉の動きを瞬時に計算し、攻撃予測点を詳細に割り出す。
「……ふっ」
マサキは短く息を吐きながら刀を抜くと、まず振り下ろされた薙刀をかわすために飛びずさった。直後、マサキのいた空間を鮮血色の光をぶちまけながら薙刀が切り裂く。続けて、緩やかに落下を始めたマサキの頭上から、光を纏った攻撃が流星群の如く殺到する。
――右、右、前、左、後ろ、前――!
だが、マサキはその全ての軌道を正確に読み取ると、何もないはずの空中を蹴り飛ばした。存在し得る全ての座標――例えそれが空中であろうと――を駆け抜けながら攻撃できる十四連撃技《嶺渡》を発動させたマサキは、そこに見えない地面があるのではないかとさえ思えるほど繊細、かつ迅速に空中を駆け巡り、ボスの攻撃をかわし続けるどころか、逆に振り下ろした腕をカウンターで斬りつけていく。
「ギアアァァァァァァッ!!」
全く攻撃が当たらないマサキに痺れを切らしたのか、ボスは更に攻撃用の腕を追加すると、マサキの周囲全方向から全方位攻撃を繰り出した。マサキを囲むように配置された刀剣類が、逃げ場を奪いながら迫っていく。
だが、そんなことはとっくにお見通しだったマサキは、表情一つ変えずに、よける素振りすら見せることなく突き進む。直撃を確信したのか、能面めいた顔を不気味に歪めてほくそ笑みながら、仏像は一気に腕を振り切ろうとする。
そして、幾十もの刀身がマサキを切り刻もうとした、その直前。複数の風が迫り来る腕の前に現れ、動きを阻害した。風を相手にぶつけることで相手の行動を阻害する風刀スキル特殊技《荒神風鎖》が《嶺渡》と重複して発動し、敵の攻撃速度を僅かに緩める。
そして、マサキの敏捷値にとって、そうして出来た一瞬の隙は、迫り来る剣の雨を掻い潜るには十分すぎた。
――SAOでソードスキルを発動させるために必要なのは、たった一つ、初動のモーションである。ソードスキルにはその全てにそれぞれ技を起こすためのモーションが設定されており、そのモーションを認識したときにのみソードスキルが発動する。当然モーションが同じ技は二つとないため、複数の技が同時に発動することはありえない。
だが、風刀の場合は違う。風刀スキルの技は使用者のイメージによってのみ発動し、モーションは関係がない。
ならばイメージを複数重ねればソードスキルが幾つも発動するのではと思うか
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