アインクラッド 後編
激闘、第五十層フロアボス攻略戦
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しかし、攻撃を成功させたはずのマサキは、苦そうな顔で舌打ちした。攻撃時の手応えからして、あまりダメージを与えられていないように感じられたからだ。
そもそも敏捷特化型のマサキは一撃辺りのダメージが極端に低く、一撃での与ダメージだけで比較した場合、マサキのそれは攻略組でも最低の値を取るだろう。それでも敵の防御力が低ければ、持ち前の敏捷性で連撃数を稼ぐことによりダメージを蓄積させられるのだが、今回のように硬い相手だと一回辺りのダメージが低すぎてそれも厳しい。《吹断》を使えば一度は防御力を無視できるが、AIに学習されてしまうためあまりそれ一辺倒になるわけにもいかない。……尤もその弱点は短時間ならば克服できるのだが……。
(……いや)
僅かな逡巡の後、マサキはその案を否定した。確かにアレは優秀だが、その分脳に負荷がかかる。敵の腕が多いと言うことは筋肉演算の対象も増えるということであり、その負荷も踏まえるとやはりできる限り温存しておきたい。
「マサキ君! 後ろ!!」
「……ッ!?」
マサキが考えを巡らせた一瞬の隙に付け込んで、ボスの持つ巨大な槌が後方から迫った。マサキは咄嗟に蒼風でガードして直撃だけは免れたが、筋力の差で吹き飛ばされる。
「くっ……」
「マサキさん!!」
何とか体勢を立て直して着地することに成功したマサキは、駆け寄ってきたあの四人組にハンドシグナルで無事を伝え、回復結晶を取り出した。即座にヒールと唱え、安全域ギリギリまで落ち込んだ体力を一気に全快させる。
「範囲攻撃来るぞ! 構えろ!!」
「くそっ、喰らっちまった! 誰か、ローテ代わってくれ!!」
「よし、俺が行く! タイミング合わせろ……三、二、一……スイッチ!!」
終盤戦に差しかかろうとしていた戦いは、今まさに熾烈を極めていた。ボスの頭上に浮かぶ、元々四本あったHPバーは残り一本と少し。一本減らすごとに敵の攻撃力と攻撃間隔が強化され、それに伴ってローテーションが僅かに崩れるなどのハプニングもあったが、臨機応変な対応で現在は完全に持ち直している。
やがて、前方で一際大きな歓声が上がった。遂に三本目のHPバーが底を突き、ラスト一本に突入したのだ。攻撃のために前衛に出ていたアタッカーが後衛に戻り、タンク隊が入れ替わって前衛に入る。
――いける。このまま押し切れる。
誰もがそう思った。確かに敵は強いが、勝てないわけではない。二十五層の悪夢は、油断していただけだったのだ、と。
――だが、しかし。
「キイィィィィィィエアァァァァァァァァッ!!!」
突如、ボスは十本全ての腕を振り上げて奇声を張り上げた。すると、身体を覆っていた金属製の重鎧がバラバラと崩れ去る。これで敵は防御力と引き換え
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