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空を駆ける姫御子
第十八話 〜ひとときの休息 後編【暁 Ver】
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を下げていたのが印象的だった。八神部隊長は自分を責めているようだけど、少し心配だ。

 心配と言えば、こちらもだ。アスナはあれ以来、考え事が少し多くなったような気がする。元々何を考えているかよくわからない娘なので、心配するだけ無駄のような気もするけど。……案の定、二日後には八神部隊長の公用車をパンダ柄にして怒られていた。

 フェイトさんはスカリエッティから入手した違法研究所の摘発で飛び回っている。あの人は……アスナとは違う意味で何を考えているかわからない。スカリエッティへの執着は、はっきり言って異常だ。その姿はかつての自分を見ているようで。あたしの神経を苛立たせた。

 スバルは訓練後などの空いた時間を見つけては、何かを調べている。あの娘も何か思うことが多少なりともあったと思う。手伝って欲しい時は言ってくる筈なので、今のところ放って置いている。あの日のあたし達の行動が、どこから漏れたのかを調べているらしいが、きっとそれも漏れているような気がする。暫くは好きにさせよう。

 ちびっ子二人は今まで以上に訓練に身を入れるようになった。何も出来なかった自分が悔しいのだろうと勝手に思っている。付き合わされるこっちの身にもなって欲しい。フェイトさんがあんな感じなので、無理もないけれど。

 中庭から空を見上げる。澄み切った空。そんな空とは裏腹に心は晴れない。最初から最後までスカリエッティの手のひらで踊っていただけだ。何故、あんな回りくどいことを? あたし達が邪魔なら吹き飛ばせばいいだけだった筈だ。本当に──── 遊ばれていた? 唇を噛みしめる。ぶつりと言う音と、口に広がる鉄錆の味。その時。あたしの視界が青から桜色へと染まる。視線だけを向けると、なのはさんが立っていた。手には薄い桜色のハンカチ。ハンカチを受け取らないあたしを見てなのはさんは少しだけ困ったように眉を寄せると、あたしの口元を拭う。優しい香りがした。

「……今日はそんなに暑くないし外でお茶会でもしようか? みんなも呼んで」

「いいですね」

 あたしはそう返すのが精一杯で。泣きそうになるのを悟られないようにその場を離れた。みんなを呼んでくると言い残して。少しだけなのはさんに微笑んで。笑えている、筈だ。

 テロリストだとか、犯罪者だとか。管理局員の使命だとか、平和の為とか、正義とか。フェイトさんとの因縁だとか。そんな物は関係ない。おまえはあたし達の──── ()だ。


──── この借りは必ず返すわよ、スカリエッティ。






 〜ひとときの休息 後編 了


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