第十八話 〜ひとときの休息 後編【暁 Ver】
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体勢は恥ずかしい。
「どうしたんですか、アスナ……え、背中に回るんですか。痛い、痛いですってば。無理に移動しないで下さい、痛い痛い、髪の毛を掴んでます」
うん、おんぶの方が落ち着く。
「人が折角、恥ずかしいのを我慢して、お姫様抱っこなる物をですね」
「しらね。早く行ってください」
「わかりましたよ……」
文句を言いながら兄は風を切って飛ぶ。私がこちらへ来て暫くは、夜中にうなされることが多かった。兄はそんなことがあると、私を背中に負ぶったまま空を飛んでくれたのだ。手を伸ばせば掴めそうな星と月。そんな夜空を見ながら私は──── あの頃から空を飛んでみたかったのだ。だから私は……空に憧れる。いつかきっと。諦めずに羽ばたいていれば、本当に飛べるようになるかも知れない。ペンギンが空を飛んではいけない理由なんてないのだから。
「余りにも漠然としたヒントが引っかかっていたんです。そんなヒントを出す理由。一つは最初から教える気が無いこと。もしこれだとしたら、こんな大掛かりでくだらないゲームを態々用意した事になります」
「そしてもう一つの理由。意味の無いヒントを出す理由。……答えは最初から出ている。簡単な言葉のトリックでした。気付いてしまえば、なんてことのないものです」
──── パスワードはあるよ
「パスワードは『あるよ』と言う単語なんです。……自信はありましたが、確証がありませんでした。だからあたしは、彼に確認したんです。嘘をつかないという前提の上で、パスワードはあると言ったことに間違いは無いか、と。だから彼は訂正したんです。パスワードはあるよだと」
「これであたしの出した答えに確信が持てました。……だから、スバル? それじゃ意味が無いのよ。パスワードはあるよと言ったが、本当か? これだと、ダメなの。……あんたは少し考えてなさい」
これが、小説であればエピローグ。と言う物になるんだろうか。機動六課の魔導師は優秀だ。オーバーSランクの魔導師も多く、リミッターを解除すれば、何処と戦争するのかと思うほどの戦力だ。だが、今回のように搦め手で責められると、意外と対処できないことがわかった。やはり魔法での力押しだけではいけないのだ、あたし達は。その方が簡単で、分かり易いんだろうけど。何とかしなければ、取り返しのつかないことになるような気がする。あたし達で変えられるだろうか。
お兄さんは疲労し、魔力素固定も覚束なくなったアスナを背中に負ぶったまま、あたし達の前へ現れた。スバルへアスナを預けると、お兄さんは八神部隊長を初め誰を責めるでもなく、大変でしたねと一言だけ言った。そんなお兄さんへ八神部隊長が、深々と頭
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