暁 〜小説投稿サイト〜
空を駆ける姫御子
第十八話 〜ひとときの休息 後編【暁 Ver】
[6/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
なものだ。……意味が無い? それはパスワードなど存在しないと言うこと。これだと、あたし達は既に詰みだ。だったら、もう一つの可能性──── わかった。お兄さんには感謝だ。だが、()()だとするならば、確認しなければいけないことがある。

 意識を浮上させる。内面世界から現実へと。視界がクリアになり瞳が焦点を結ぶ。あたしの変化にいち早く気付いたスバルが声を掛けてくる。あたしはそれに片手を上げるだけで答え立ち上がった。全員があたしを見ている。だが、その期待にはまだ応えられない。あたしは息を吸い込むと言葉を発した。

「ジェイル・スカリエッティ、聞こえてるわよね? 一つお願いがあるんだけど」





 足が鉛のように重い。視界が汗で滲む。このまま止まってしまいたい。……冗談じゃ無い。もっと飛ばなければ。もっと。もっと遠くへ。高く、高く。

──── 凄いとは思うけどね。実際に空戦を行うなら空士の方が有利だよ。

 うるさい。私は飛んでいる。どうして、こんなことばかり思い出すのか。

──── ペンギンが一生懸命に羽ばたいたところで、地上に墜ちるだけだよ。

 黙れっ。

「……あ」

 私が踏み出したその一歩は……文字通り空を切った。





『まさか、そちらから話しかけてくるとはね。驚いたよ』

 スピーカーから聞こえてくるスカリエッティの声は、言葉に反して全く驚いている様子が見られなかった。それよりも周りにいた皆の方が驚いた顔をしている。

「一つだけ質問をさせて欲しいわ」

『パスワードを教えろなどと言うつもりではないだろうね?』

「それこそまさかよ。どうせ尋ねても教える気はないでしょう? そんな事はしない。あたしの秩序と信念に誓ってね。その代わり……あなたの秩序と信念に誓って嘘偽り無く答えると誓いなさい」

 今度こそ。スピーカーの向こうでスカリエッティが息を呑む気配がした。

『良いだろう。質問を一つだけ許可しようじゃないか。私も嘘偽り無く答えることを誓おう』

 よし、乗ってきた。慎重に言葉を選びなさい、ティアナ・ランスター。

「あなたはあの時……パスワードはあると答えた。それに間違いは無いわね?」

 皆が驚きの声を上げた。それはそうだ。今更こんなことを聞いたところで意味は無いのだ。だけど、あたしが確かめたいのはそう言うことじゃないのだから。スカリエッティは暫く沈黙していたが、やがてこう答えた。それは、皆にとっては予想外であり、あたしにとっては予想通りの答えだった。

『違うよ。私はパスワードはあるよと答えたんだ』

──── 大当たりだ。

「ありがとう」

 犯罪者にお礼などどうかと思ったし、元々は向こうが仕掛けてきた喧嘩
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ