第十八話 〜ひとときの休息 後編【暁 Ver】
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「ティアナさんが段々と疑り深くなってきて悲しいですね。……それでは今日は何の話をしましょうか。あ、そうそう。いつだったか、顧客のお子さんを一日預かることになりましてね。6歳くらいの」
ほら、きた。あたしはお兄さんの言動。仕草。些細なことも見逃すまいと気合いを入れる。
「この子がまた顔立ちと言い、仕草と言い、小さな頃のアスナそっくりでとても可愛らしい子でして。……何でそんなゴミを見るような目で、私を見るんでしょうか」
「……捕まえますよ?」
「ちょっと待ってください。私にそんな性癖はありませんよ」
「そのことに関しては後でじっくりと詰問します。アスナと一緒に。では続きを」
「勘弁してください……えぇとですね。一日中家に籠もっているのも何ですので、どこか行きたいところはあるかと聞いたところ『ぬいぐるみ』が見たいといったので、デパートへ出かけたわけです」
「はぁ」
「沢山のぬいぐるみに囲まれて瞳を輝かせている姿はとても愛らしくて」
「それはもういいですから」
「そうですか? まぁ、折角きたんですし見るだけというのも可哀想なので、一体買ってあげたらとても喜んでくれました。その後は食事をして……お子様ランチとか頼むんですよ? 可愛いとしか言いようがないですよね」
この人、本当にノーマルなんだろうか。アスナが心配になってきたわ。
「まぁ、それで終わりなんですけど」
「え? 終わり、ですか」
「終わりですよ」
何だ、それは。唯の世間話では無いか。肩の力がどっと抜ける。
「ティアナさんは、今の話を聞いてどう思いました? まさか、私をロリコンだなんて」
「思いました。……本当に違うんですか?」
「勘弁して下さい。何で私にロリコン疑惑が……」
「幾ら何でも小さい女の子とデートした話を、いい大人がすれば疑われるに決まってるじゃないですか」
呆れて物も言えない。あたしがティーカップに口を付けようとした時、スクリーンの向こうのお兄さんの目が細められていることに気が付いた。不味い、怒らせてしまっただろうか。あたしが言い過ぎたことを謝罪しようと言葉を舌に乗せる前に、お兄さんはこう言ったのだ。
「男の子ですよ。……何故、ティアナさんは女の子だと思ったんですか?」
あたしの思考は一瞬にして凍り付いた。ちょっと待て。何故も何も、だって……いや、言ってない。唯の一度も。お兄さんは『女の子』だとは一言も口にしてはいない。
「叙述トリック。というやつですね。ミステリーでは、さほど珍しくない手法なんですが。文章上の仕掛けによって読者をミスリードさせるんです。これの鉄則は『嘘』をついてはいけないこと」
お兄さんは珈琲を口に
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