第二十話「壮絶料理対決 前編」
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。よく覚えておけ。これが、理不尽だ。
朗らかな笑みを浮かべながら迫りくる火球を迎え入れた。
† † †
魔力障壁を展開して難を逃れた俺は、キシャーとフィアを威嚇するクレアを宥めた。
心労を感じながらも今度はエストの元に向かう。
「ようこそ、リシャルト。エストのお料理空間へ」
「いきなり何を言ってるんだ?」
「……」
「口を菱形にしない」
最近、我が契約精霊は情緒豊かになってきているようだ。時たまこのように冗談も口にする。
「冗談はさておき、エストが最後なんですね」
「それは見学の順番か? まあ他意はないんだが――」
「エストが最後なんですね」
……どこか不満げの様子。こういうときは頭を撫でると機嫌が直るんだ。
口を菱形にして無言で抗議するエストの頭を優しく撫でる。
「ふぁ、リシャルト……」
「機嫌を直せ。本当に他意はないんだ。……ところで、エストって料理できたのか?」
まな板の上には鯛のような魚がある。包丁を片手に今にも捌こうとしていたのだろう。
「もちろんです。前契約者から料理の『さしすせそ』を教わりました。これでも美味しいと言われていたんですよ?」
「へぇ、それは初耳だな。今度、エストが契約していた人の話を聞かしてくれないか?」
「はい……必ず」
エストは一瞬遠い目になるが、すぐに気を取り直した。
「それで、何を作るんだ?」
「はい。東方伝統のお料理――オサシミです」
まさかの刺身がきましたか。
日本発祥の伝統料理の一つ。生魚に醤油という調味料をつけて食べるという発想は斬新で、瞬く間に海外でも広く知られるようになった料理だ。
俺も前世で師匠に食べさせてもらったことがある。
あの時はマグロの切り身だったが、すごく美味だったのを覚えている。特にうわさに聞いていたスシは最高だった。
しかし、そうか。エストがサシミを……。これは楽しみだな。
サシミなら一口サイズに切り分ければいいだけだから、見栄えはともかく味の方は問題ないはずだ。変なことをしなければ……。
「ですが、リシャルト。困った事態が発生しました」
表情を変えずに困ったというエスト。
「どうした?」
「お魚さんがこっちを見ています」
それは、あれか? 斬れないと?
確かにまな板に置かれた鯖らしき魚はエストの方を見つめてい
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