第2部:学祭1日目
第6話『思慕』
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うまいよね」
「おいおい、まだ伊藤の料理だとは分からないだろ。それに手料理、食ったことあるんか?」
「ううん。でも、そうだったらいいなと思って」
「願望で物を言うなよな、人に……」
「へえ……みんな俺の料理、気に入ってくれるなんて……」
誠は声のするほうをちらりと見ながら、つぶやいた。
「世界もとりこにするほどだからね、伊藤の手料理は」
厨房を取り仕切っていた刹那が、誠の尻をぽんと叩く。
「あ、ありがとう」
目を丸くして彼は答えた。
刹那はそのまま、厨房の仕切りの合間をちょっとのぞき見る。
そのまま、動かない。
ケーキにサクランボを飾って料理を完成させると、誠は刹那のところへ行き、
「どうした、清浦?」
「いや、あの子、なんか可愛いなと思って……」
刹那が見ているのは、唯の向かいにいる、つり目小柄なツインテールの子。
「おい清浦……ひょっとしてお前、そういう趣味あるのか?」
「そうじゃなくて、おなじ同性でも人目を引く人いるでしょ。桂さんとか」
「……まあ、言葉はあのスタイルだしな。でもどっちかというとあの髪の長い人、ちょっと言葉に似た人のほうが……」
梓の斜向かいに座っている、姫カットの前髪、黒髪ロングヘアーの子に誠は目を向ける。
あ、ベラ・ノッテに行ったときに感じた視線は、あの子の……?
誠はふと、そう思った。
「まあ確かに、あの人は桂さんに似ているね。でもまあ、人の好みはそれぞれだよ」刹那はくっくっ笑って、「はい、仕事復帰」
誠の尻をつついて仕事場へ向かう。
彼は仕事場に引かれながら、ちらと唯のほうに目を移した。
彼女は、一緒に喫茶店に行った時、あの時と同じ笑顔で、朗らかに笑っていた。
あのときと同じく、口にクリームをいっぱいつけて。
それを見て、しこりが急に氷解していった。
そうだ。
俺はずっと、あの子の笑顔が見たかったんだ。
端っこに小さなレジがおかれ、こちらも交代で会計をする。
偶然にも世界が会計として、灰色の小さなレジを打っていた。
「じゃ、お会計3880円ですね。」
「割り勘で頼むわ」
レジを動かす世界に、律は小銭でパンパンになった財布を取り出し、勘定をすませる。
食事はおいしかったものの、唯は結局誠と顔をあわせられず、落ち込んでいた。
「マコちゃん、結局いなかったな……」
「ライブで会えるさ」
再び澪の励ましが入る。
「ねえ、あたし特上の彼氏探してるんだけどさ、あんたいい人知ってる?」
「え、急に言われても……」
律が頬杖をつきながら尋ねる。思わぬ質問に困惑する世界。
続いてさわ子が、
「スカートはもっと短いほうがサービスいいんじゃない? それとそれとより露出度を高めて……」
「さわちゃんの言う
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