第2部:学祭1日目
第6話『思慕』
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…」
マコちゃん、いるかなあ。
期待を弾ませて唯は、3組の入り口にたどりついた。
「いらっしゃいませー! 席へご案内いたします!!」
教室の入り口に入ると、すぐに、白い服にピンクのエプロンをかけた女の子が近づき、唯達を席に案内する。
その少女と目が合って、唯はひやりとなった。
誠に、いつもくっついていた子だ。
世界のほうは一瞬、笑顔が消えたようだったが、すぐに朗らかな表情に戻してメモを取り出す。
「こちらが、メニューでございます」
「お、サービスいいじゃんか。自分たちから近づいて、自分からメニューを取り出して渡して」
律はにっかり笑って言った。
「ありがとうございます。ご注文のほうは?」
「そうだねえ、私はバナナクレープにしようかな」
他の皆も、それぞれ好きな製品を注文していく。
「わかりました。おかけになってお待ちください」
きっちり45度で頭を下げる。
「なかなか丁寧な接客じゃないですか。それにはきはきしてるし」
ムギがにっこりしながら世界をほめた。
「あ、ありがとうございます……。海の家のバイトが役に立ったかな」
世界は顔を赤らめて、セミロングヘアーを振りながら厨房に向かった。
「あの人……」
唯は隣にいる澪の肩をつつきながら、小声で言った。
「え?」
「あの人、いつもマコちゃんにくっついてた人だよ……」
しょぼくれた表情で、唯は打ち明けた。
「じゃあ、あの人が西園寺?」
澪も思案顔になった。
その時、
「あ、甘露寺さん」
ムギが明るい、しかし興奮した声を上げた。
みると、長身でボーイッシュなルックスの少女が、別の人の注文を受けている。
「え、あたし?」
ムギの声に気付いて、七海もそちらを向いた。
「あ、すみません……仕事の邪魔しちゃって」
「あ、いえいえ……どうしたんです?」
「甘露寺さん、榊野の女バスをベスト4まで導いた人だと聞いていたもんで、いろいろと話が聞きたくて」
頬を染めて近づくムギに対し、
「あ、あー……今は取り込み中ですから、午後ゆっくりと」
同じく頬を染めて、七海は奥へと引っ込んだ。
「ムギ、今は仕事中なんだから迷惑だろう」
たしなめる澪に対し、
「でも……今逃したら、甘露寺さんと話ができないと思って……」
少しむくれてムギは答えた。
「ライブで会えないこともないんじゃねえか」
唯はその間、黙って客席全体を見渡した。
お客の中にも、ウェイターの中にも、誠はいなかった。
「いないなあ……」
下座で呟く唯に、
「伊藤、喫茶店にいると言ってたのか」
澪が小声で話しかけてきた。
「そうだよ。ぜひ来てほしい、といってたし」
お冷を飲みながら唯は言った。
「きっと厨房にいるんだろうな
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