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Cross Ballade
第2部:学祭1日目
第6話『思慕』
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だい?」
 律が拒否するが、
「食べ比べるの!」
 唯は強い口調で繰り返した。
「私は怖いの嫌いだし、唯の意見に賛成かな」
 澪が唯に、そっと寄り添った。梓は指をつんつんしながら
「私も……甘いものが食べたいです……」
「私は……どうしようかなあ……」
 さわ子は腕組みをする。
「分かった、行こう行こう」
 律がぶっきらぼうに言った。
 澪に肩をたたかれ、唯は振り向いた。
 澪は黙って、唯を真剣な表情で見つめた。
「澪ちゃん?」
「もしかして、伊藤がいるのか?」
「うん……」
「まあ、正直私も伊藤に会いたいからな。桂のことや今までのこと、もう少し詳しいことを知りたいし」
「澪ちゃん……」
 澪も、ひょっとしたら込み入った中に入り込みたいのだろうか。
 彼女はつぶやいた。
「自分の思いに正直になりたいのは、唯と同じかもしれんな……」


 1時間ごとに、ウェイターとコックの役を交代させ、3組の喫茶店は、何とか客をさばいていた。
 料理に慣れている誠も、さすがにひいひいしてきた。
「みんな!」
 トイレから戻ってきた刹那の声に、皆がそちらを向く。
「どうした、清浦?」
「放課後ティータイムが来てる」
 他の皆は「それがどーした」と言い返すが、事情を知る者は緊張する。
「とりあえず伊藤は、厨房に交代だな」
 七海が真っ先に言った。
「待て甘露寺、1時間ごとの交代じゃなかったか? まだ20分しか経ってないぞ」
 誠が反発するが、
「つべこべいわない! また平沢って奴といちゃつかれちゃ困るんだよ」
「そうよ、まだあの噂は完全に消えてないんだからね」
 七海と光から鋭い眼光でにらみつけられ、「別に浮気してるわけじゃないってば……」とつぶやき、誠は黙って引き下がった。
「放課後ティータイムには私が接客するから。世界は心配しなくていい」
「でも七海は、相手が嫌いだとすぐ顔に出ちゃうから、まずくない?」
 冷静な刹那の意見である。
「私が行く」
 名乗り出たのは、世界だった。
「世界? 大丈夫?」
「この際平沢さんや、放課後ティータイムがどんな人たちだか、接していれば少しはわかると思うし」
 他のメンツは、何がなんだかさっぱりわからない。
 なんだなんだと詰め寄る皆を、泰介はなだめ、
「田中も福田も、気にしない。人の噂にちょっかいは出さない。
まあ、誠は我慢するんだな。モテ男もつらいけどな」
「だからモテ男言うな」
 誠は、すぐにコンロに火をつけた。
 周りは、
「そういえば、伊藤って桜ケ丘の女の子といい仲だもんな……」
「西園寺も頑固だなあ。伊藤が目移りしてると思って必死になっちゃって……」
 噂話に、また花が咲く。
 思わず誠は、体を丸めた。
「やめてくれってば…
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