第2部:学祭1日目
第6話『思慕』
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すれちがった榊野生徒の女子たちが、話をしている。
「ねえ、例の休憩所、借りれるよね」
「う、うそ、来実、彼氏作ったの?」
「いよいよ来実も、晴れてチェリー卒業かあ……。いいなあ……」
「私たちも、石丸先輩や大岡君とか、いいところ探してみるか」
来実と呼ばれた少女の手元にある、『あるもの』にふと、目がとまった。
自分も、ああなれたなら……。
唯の心を読んだかのように、梓が、
「唯先輩、もう伊藤って奴には近づかないほうがいいです。そもそもそいつ、二股も三股も掛けるような」
「梓」澪が梓の肩に手を置く。「言ったって……」
「でも……」
「お願い、あずにゃん、澪ちゃん」唯は2人に目を向け、「しばらく、私の自由にさせてくれない?」
「いい加減にしてくださいよ!! 唯先輩の行動で、みんなに迷惑かけてるんですよ!!」
荒い声の梓に、周囲の視線が集中する。
「梓、トーンダウン」澪はあわててたしなめ、「でもさ、唯。伊藤には、すでに彼女がいる。わかっているだろう?」
「でも……あきらめたくない。これだってわかるよね。正直、もう恥じることなんか何もないんだ!」
唯は反駁する。
思いが制御できない。
誠と親しくなってから、いつもそうだった。
周りがぼそぼそと、彼女をみて噂をする。
大方、自分と誠の話なのだろう。でも……。
「梓、黙って見守るしかないって、以前言ったじゃん」
律が半分呆れ気味の表情で言う。
「見守られますか! いろいろ込み入っているみたいですし、向こうにもこちらにも迷惑がかかるだけじゃないですか!」
「梓、できる限り私が唯を抑えるから」
と、澪。
「澪先輩……」
「たぶん伊藤自身から振られるまで、唯は止まらないと思う」
「な、なんでそうなるのよ!!」
唯は声のトーンを上げた。
「お前はそういう人間だからな。子供っぽいし、一つに集中すると周りがおろそかになるし。
あまり何も言わないようにしておくけど、羽目外すんじゃないぞ」
「わかってるよ……」
唯は沈んでしまった。
「それでいいのかなあ」
梓は半信半疑。
「とりあえず、私たちは私たちでいい出会いを作ろうぜ」律は言ってから、背の高い男性を見つけ、「おーい、お兄さん、私とデートしないかい?」
声をかけられた男性は、「また今度」といってそそくさ立ち去る。
「はーあ、異性への声のかけ方、りっちゃんはまだまだね。私が教えてあげようか」
「さわちゃんはうまく落とせたのかよ」
2人のやり取りに、唯はため息をついて、
「ねえ、みんなで1年3組の喫茶店に行かない? 私たちが食べてるケーキやお茶と、どっちがおいしいか比べてみようよ」
「おいおい、スイーツなんて、うちら毎日食ってるじゃねえか。それよりお化け屋敷なんかどう
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