第2部:学祭1日目
第6話『思慕』
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レゼント、用意できたぞ」
七海が、輪飾りをつなげながら言った。
「プレゼントまで用意してるのか……いったい何なんだ……?」
「ベンツ1台、なんちゃってー」
「いや、たけえよ……それに俺たち運転できないだろ……」
「冗談って言ったじゃん。本当はパルコで買った高級チョコ2袋」
「チョコかあ」世界は顔を輝かせて、「あそこはおいしいものね」
「ま、あたしやあんた達には縁のないものか。1号をみんなで祝福しようぜ」
「それもそうだな」
瞼の奥に唯の笑顔が浮かんだが、言葉や世界の顔を思い出してかき消した。
ふと、七海の携帯が鳴り、その場を離れて電話をする。
「あ、もしもし、私、七海。……分かった、こちらもこちらで対策立てるから」
世界と誠のところに来て、
「桂も午前中に手伝いのシフトをずらしたらしい。となれば、かなりやばいな……」
誠はもう何も言わないでおいた。何か喋ったら、どう怒鳴られるかわからない。
「あんまり、桂さんを敵視するのもよくはないけれど……」
世界が言葉をかばうが、七海は、
「敵はどう来るかわからないからね。一応手は打っておいたけど。そうだ、平沢って人はどうしようか」
「最近は噂もしぼんできたけどね……」
「でもまあ、向こうは本気みたいだからさあ。ちょっと気の毒だけど、警戒するのに越したことはないぜ」
無駄話をしている間にも、教室の外で生徒たちが、開店は今か今かと待ちわびていた。
誠は、窓越しに生徒たちの様子を見ながら、ちらと思った。
平沢さんも、いるかな。
モグラのようにもたげてくる唯への思いを、再び世界の顔を見て、消した。
銀色で殺風景な校内のいたるところに、輪飾りや派手なポスターが付けられている。携帯のマスコットと思しきピンクの髪の着ぐるみが、手にインクを付け、手形を作っている。
ここは、榊野学園校舎の1階である。
榊野の生徒、桜ケ丘の生徒、両方入り混じっている中で、放課後ティータイムは校内の散策をしていた。
「こうしてみると、女ばかりが多く見えるな……。榊野が共学であることを忘れる……」
最後尾にいる澪は、キョロキョロしながら呟く。
「しっかし唯」律は呆れたように、「ただ遊びに行くだけなんだから、ギター持ってかなくてもよかったのに」
唯一人だけ、ギターケースをかついでいた。
「いいじゃない、なるべくギー太と一緒にいたいし」にこやかに笑って唯は言った。「それにさあ、こうしてみんな楽器を持ち歩けば、『放課後ティータイム、ここにあり』ということがアピールできるじゃない」
「それもそうね」ムギがうなずくが、「でも、りっちゃんと私は持ち歩けないわ。ドラムもキーボードもかさばるし」
「くすくす、仕方ないよ」
一行は2組のオナベ&オカマバーを通りすぎていた
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