第2部:学祭1日目
第6話『思慕』
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してる」
泰介にしては、妙に小声。
「そりゃあ、好きな人のことを考えるとうれしいだろ? 世界や言葉のことを考えたときだって」
「いやいや、西園寺や桂さんのことを話す時よりいい顔をしてるよ。それに甘露寺たちがお前らを見張ってから、急に誠は笑顔がなくなっちまったし」
ニタニタしつつ、泰介は言った。
それは……。
きっと、平沢さんの笑顔が伝染したからだろうか。
そうだよなあ。周りにもうつすようないいものだし。
ばしっ!
急に頭に、焼けるような痛みがした。
「浮気者!」
声のするほうを向くと、光。
「黒田? 別に浮気なんてしてねえ」
「やっぱりあんた、平沢さんのことが好きなのね。今の聞いてたからね、世界にも報告するから」
「ちょっと待て、黒田!」
「あんたは世界とデキた仲なのよ! 忘れないでよね!!」
「分かってるよ……」
「ふん、澤永、行くよ!」
「ちょっと待て黒田、俺はまだ誠と……」
泰介の話も聞かず、光は強引に泰介の手を引っ張って行ってしまった。
誠はギターを奥に運びながら、初めて世界と結ばれた日のことを考えていた。
たぶん、それは親父の血なんだろうな。
そういえば、世界と結ばれたのも、言葉と触れ合いたいという思いから始まった。
でも、世界や言葉と違ってあの子は触れ合わなくても……
笑顔だけで相手を虜にするような、人間なんだ。
「すみませーん、オーダー!」
客の声で彼は現実に戻り、急いで客室へ向かった。
「あ、はい。ご注文は何でしょうか?」
ウェイターとしての声で、尋ねた。
続く
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