第2部:学祭1日目
第6話『思慕』
[11/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
通りかもしれんな」
「そんなこと言われても……」
うなずく律に対し、顔を赤らめながら世界はどぎまぎする。と、そのとき
「「あだだだだっ!!」」
律とさわ子の声が重なった。澪が後ろから二人をつねったのである。
「あんたら何しに来たんだ……しょうもないこと言って」
「いや、だってこの人人気ありそうだしさ、いい男知ってるかと思ったんだもん」
律が言い訳する。
「それに来年の学祭の参考になるのではないかと思ったのよ。私は桜ケ丘で人気あるし、さわちゃんのアイディアはいい参考になると思って」
さわ子はへらへらしている。
ぼかっ!
澪の鉄拳制裁がくだった。
「いい加減にしろ……」
「くすくすくす……」世界は思わず吹き出してしまった。「面白い人たちですね」
「あ、すみませんね……」澪はバツが悪そうに答えた。「2人とも悪い人たちではないんですけどね、羽目を外すことが多くて」
「いえいえ、参考になりました。後輩に話してもいいかもしれませんね。」
「ねえ」澪は小声でさりげなく、「伊藤のこと……」
「ん? 何ですか?」
「……。なんでもないです」
世界の視線から眼をそむけ、澪はごまかした。
喫茶店から廊下に出る時、ちらりと、澪と唯の目があった。
唯は、いたたまれない気持ちで、澪を見た。
澪は多くを読み取ったらしく、
「まあ、しょうがないよ。ライブに伊藤が来るといいんだけどな」
そうか……そうだよね。
ちくちく胸のあたりが痛んだが、唯は無理に気持ちを前向きにし、言った。
「きっと来るよ。マコちゃんメールでそう言ってたもん」
澪がやや不安げな表情になったのを見て、
「ひょっとしたら桂さんも来るかな? 澪ちゃんは来てほしいんでしょ」
「なっ、頼むから桂の話はやめてくれよ?」
「お互いに頑張っていこうよ」
ぽんっ。
「何で肩つかむんだ!!」
2人のやり取りを見て、
「あーあ、何やってんだか」
呆れる律の耳に、周りの女子生徒の噂話が入る。
「ひょっとしてあの子たち、桂の知り合い?」
「あんなフェロモン女と仲いいなんて、どんな子かしら」
「スタイルもいいし、きっとエンコー仲間なんだよ」
彼氏のことばかり考えていた律の頭に、雲がよぎった。
ムギと梓も聞いたのか、二人とも顔をしかめている。
「あの桂って、どんな奴なんだか……」
残るさわ子は、
「ねーねー、お兄ちゃん、暇―?」
と、すれ違う男に手当たり次第声をかけていた。
「やはり特上の生徒たちばかりだな、桜ケ丘の人って。特にさっきのメガネの人が。どうも軽音部の顧問らしいけれど」
泰介がはしゃぎながら、クレープの生地を返す。
「それはよかったな」
誠はぶっきらぼうにフライパンを動かし、生地をはね
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ