第2部:学祭1日目
第6話『思慕』
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かった。
会えるかな。
もし会えたら、自分の思いを素直に伝えたかった。
好きだ、って……。
シャワーを浴びて、誠はリビングに出る。
そこには、母の書きおきと、ハムエッグ、フレンチトーストがあった。
『いよいよ今日から学祭だね。
2日間、しっかり頑張りなさい。
母より』
書きおきをパジャマのポケットにしまい、朝食を食べてみる。
「……うまいな」
悩みを打ち明けて以来、母はいろいろと誠を気遣っている。
いつもより早めに起き、朝食を作るようになったし、できる限り早めに帰って、炊事をおこなうようにしている。
ありがたかった。やはり親はそばにいたほうがいいかもしれない。
ふと、携帯にメールが届いた。
2件。
言葉と、唯からだ。
『おはよう、伊藤君。
いよいよ今日が、榊野学祭だね。
私の演奏、絶対聴きに来てね!!
待ってまーす!
平沢唯』
「平沢さん……」
彼女のホンワカした笑顔が、携帯を通じて見える気がした。
つづいて、言葉のメールを読んでみる。
『誠君、いよいよですね。
午前中は私、クラスの手伝いをしないといけないんですけど、午後は私もあいているんです。
誠君と一緒に、いい思い出作りたいです。よろしくお願いします。
桂言葉』
「言葉……」
ふと、頭に引っかかるものがあった。
「世界は…学祭に来るんだろうか…」
あれから世界は、ずっと学校を休んでいる。
毎日お見舞いをして、手土産を渡したつもりだが、いまだに戻らない。
当然だろうな。
ただ……。
世界がいなければ、学祭でゆっくりと言葉と過ごすことができる。それは、確かだ。
気を使わずに、放課後ティータイムの演奏を聴くことができる。それも、事実だ。
そういう考えが頭の中にあり、自覚するだけでぞっとした。
桜ケ丘高校は、今日は土曜日でお休み。
だが、音楽室にはすでに、放課後ティータイムのメンバーが集まっていた。
「おはよう! いよいよだね!!」
入るや否や、唯は元気よく皆に声がけした。
「ああ、いいライブにしような!! ファイト!!」
律が右腕を上げる。
「正直、軽音部員初めてのライブがこれじゃあねえ……」
梓は朝から憂欝である。
「まあ、やるだけやりましょうよ」ムギがお菓子を配りながら、「いよいよなんだから」
澪は端っこで、榊野学祭のパンフレットを見ていた。
「桂は1年4組か…よりにもよってお化け屋敷かよ…」
どんよりする澪を見て、
「わっ!!」
と驚かすさわ子。
「ひいいっ!! ってなにしてるんですか!」
澪はさわ子を追い回す。
見慣れた光景である。
「くすくす…。ねえ、せっかくだから、みんなで学祭見物してみない?」
唯がはい
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