第17話「京都―決戦B」
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大量の鬼に囲まれたネギは、とりあえずの時間稼ぎのため、竜巻のような風の防壁を展開していていた。
この竜巻によって、外を取り巻く鬼達は近づくことも出来ずに外でじっと待っていることになる。
そんな防壁の内部。
ネギと刹那が仮契約のための儀式、つまりはキスを済ませた瞬間にそれは起きた。
いち早く気付いたネギが咄嗟に身構えて叫ぶ。
「誰かが、内部に侵入してきます!」
「なんですって!?」
「ちょっと、私まだ心の準備が……!」
防壁を突き破り、黒い姿が躍り出た。咄嗟に迎撃しようと刹那が刃を振り上げ――
「タケルさん?」
ネギの声に「――え?」と慌てて刃を止めた。
頭から落下しようとしていたタケルはその体を反転。足元からの蒸気とともに見事に着地して見せた。
「……無事に……着地できたか」
――コントローラーに示される敵は確かに、この近くだな……この竜巻も、台風の目っていうやつか……ん? 移動しない竜巻なんてあるのか?
少しばかり呑気なことを考えたタケルだったが「っ!」
ジクリと胸の痛みがさらに増す。
「タケルさん!」
その覚えのある声に、タケルが目を向ける。小さな身長に、赤い髪。おぼろげな目では既にその人物の顔を判別することすら出来そうにない。
「……ネギ……か?」
刹那がそのタケルの様子に首を傾げる。だが、アスナもネギも、カモでさえも彼の登場に心を躍らせているのか、喜びの声をあげていて気付かない。
「タケルさん。助けにきてくれたんですね!?」
「先輩!」
「旦那ぁ、丁度、大ピンチだったんでさぁ!」
だが、タケルが彼等の声に快い返事を出来るはずがない。
「……スマンが……こっちもまだ、用事が……終わってないんだ」
ゆっくりと立ち上がり、足元に血がぽたりと落ちた。刹那が何気なく視線を動かし、目に止まったそれを見たとき、彼女は叫んでいた。
「……た、タケル先生!?」
慌てて近づき、羽織ってあった学ランを剥ぎ取る。
「「「え」」」
ネギたちもその姿に声を失った。
制服の下に現れた、黒いコスプレのような服。本来ならそっちに気がいくはずの格好だが、今はそれよりももっと目を奪うものがあった。
「タケルさん……それ!」
「……嘘」
一同が向ける視線の先には、胸に包帯として巻かれた真っ赤なシャツ。それに気付けば後は芋づる式にタケルの異変に気付く。
乱れている息。小刻みに揺れる体。溢れ出る血。青ざめた顔。おぼつかない足元に焦点の合ってない目。
誰もが目を見開く中、それでもタケルは真っ直ぐに立っている。
「「「「……」」」」
声を失っていた
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