第17話「京都―決戦B」
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彼が気軽に言う用事とは、これほどに危険性の伴うものだったことを今更ながらに教えられたのだ。もちろん、アスナや刹那は傷を見たこともあり、大体の予想はしていた。だが、それでもこれほどに死に掛けることだとは思っていなかった。
「……スマン、な」
いつものようにネギの頭に優しく手を置く。その優しい行為に、全員が息を呑んだ。
今朝に、軽く「用事だ」とだけ言って、その場いなくなったのは、それ自体が彼の気遣いだった。誰にも心配をかけず、自分はそれだけ傷ついて。
そして、それは今正に死に掛けているにも関わらず、変わらない。
――この人は本当に立派な人だ。
ネギは顔を伏せ、歯をくいしばっていた。電車の中でアスナに漏らした自分の小言が許せなかったのだろう。
アスナは顔を伏せ、体を震わせていた。これほどに死に掛けている人間をはじめて見て、恐怖に駆られているのだろう。むしろ取り乱していないだけ、いち中学生としては冷静といえるかもしれない。
唯一、刹那は符を取り出し、行動に移っていた。
「……」
なにやらブツブツと唱え、「よし」と呟いた。それをタケルの胸に掲げ貼り付ける。
「……んん」
のっそりとタケルが反応するが、よくわかっていないのか、首をかしげた。
「先生の傷がこれ以上、広がらないように応急処置を施させていただきました。とりあえずこれで当分は出血と傷の悪化を抑えられるはずです」
――私に出来ることはこれ位しかありませんが。と申し訳なさそうに頭を下げる刹那に「いや、すまない、助かる」とタケルが僅かに頭を下げる。
それらを見ていたネギも慌てて魔法を唱えだす。
「ラス・テル マ・スキル マギステル 花の香りよ 仲間に元気を 活力を 健やかな風を refectio(レフエクティオー)」
――僕も回復魔法は苦手で、これだけしか出来ませんが。
そんなネギの言葉に、だがタケルの顔色は僅かに良くなり、呼吸も落ち着いた。痛みも大分マシになったようだ。
「……スマン、大分助かった」
まだ顔色は悪いが、それでも言葉にはしっかりとしたものが戻っていた。
本来は先ほどの魔法のリフレッシュ程度の意味しかなさないはずだが、刹那の護符との効果もあいまって、タケルにとっては痛みが止まり、血も止まり、僅かだが体力の回復。と起死回生の回復になっていた。
ネギと刹那に行儀よく頭を下げて、考え込むようにして顎に手を置いた。
「周囲の鬼は君達の敵と認識してもいいのか?」
「え? あ……はい」
――それがどうかしましたか?
首を傾げるネギに呟く。
「……折角だ、俺の標的が逃げるまでなら、周囲の敵の掃討に手を貸させてくれ」
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