第123話 十常侍誅殺 後編
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は張譲を睨みつけた。彼女の言葉に張譲は一瞬眉を潜めたが直ぐに表情を戻し劉弁に説明を始めた。
「陳留王、皇帝陛下の膝元である宮廷を襲撃する者を賊と評せずして何と評すのでございますか? 陛下、痴れ者の跋扈する宮廷より御身をお護りするため遠ざけるは臣の務めにございます。この張譲の言葉をお疑いであれば死を賜りたく存じます」
「協、ここは張譲の言葉を信じよう。董仲穎の元に辿り着き次第、都に戻ればいい。母上のことは心配ではあるが致し方ない」
劉弁はそういうと劉協の左肩にやさしく手をあて彼女を諭すように言った。劉協は劉弁の言葉に、それ以上何も言わなかった。だが、劉協は劉弁の言葉に納得できないようで、それ後も張譲へ疑心の目を向けていた。
馬車はひたすら道無き道を走っていたが、いきなり止まった。
「どうしたのだ。さっさと馬車を走らせろ」
張譲は不機嫌そうに外にいる近衛兵に向けて命令する。
「大軍に囲まれております」
近衛兵が震える声で張譲に応えた。その声に異常を感じた張譲は緊張した表情になる。
「どういうことだ?」
「数の特定は難しいですが、確認できるだけで五千の騎兵が我らの周囲を囲んでいます」
「五千!?」
張譲は兵の数に卒倒しそうになった。しかし、張譲は恐る恐るに馬車の外を見るために格子の隙間から外を覗いた。劉弁も表情を強張らせながらも劉協を自分の側に呼び優しく守るように抱きしめた。
「なな何じゃ・・・・・・、まさか袁本初の軍なのか・・・・・・。嫌、ありえん。彼奴の兵にしては数が多すぎる。劉正礼の兵なのか。嫌もっとありえん。今、奴は辺境の冀州におる。誰じゃ誰なのじゃ」
張譲は狼狽しながら独り言をつぶやきはじめた。それに反応したのは劉協だった。
「袁本初? 劉正礼? 賊とは袁本初なのか? 張譲、やはり陛下と私をたばかったな! 張譲、宮廷を襲撃した者の目的は貴様の首であろう」
劉協は張譲を厳しい表情で睨みつけ責め立てた。
「うるさい! 黙れ! この小娘が」
張譲が追い込まれた獣ように凄い形相で劉弁と劉協を睨みつけた。その形相に二人は本能的に恐怖を感じ押し黙った。
「こうしても埒が空かん。あの兵達を率いる者を確認せねば。少なくても統率の取れていることを見ると野党の類ではあるまい」
張譲はブツブツと独り言をした後、馬車の中から外に向けて大声で叫んだ。
「お前達は何者だ!」
張譲は自分の素性を明かさずに相手の素性を知ろうとした。もし、袁本初や劉正礼の兵であれば自分は間違いなく殺されると思ったのだろう。彼はじっと相手の様子を窺う。彼の額に玉のような汗が滲み出て、瞬きを一切せず瞳を見開いていた。
時待
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