第一章 平凡な日常
30、神様の苦悩
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ョーカーの青い石が、微かに煌めく。
その時だった。
「う………ッ」
「!! 要!?」
要が、ゆっくりと目を開けた。
「……な、ぎ……?」
「要!? 目が覚めたのか!?」
「銀……。へっ、男の癖に泣いてんなよ」
言われて気づく。
オレの頬にも涙が伝っていた。
もう、オレには流す涙なんて枯れたと思ってたのによ。
「要ぇっ」
凪は、泣きながら要に抱きついた。
そんな凪を、要は優しく撫でる。
オレはそれを見守るしかできなかった。
「要、お前1ヶ月も眠ってたんだぜ」
「!! そんなにか……!? …… そうか、ごめんな凪。心配かけた」
「凪だけじゃねぇ。ケータイ見てみろ」
そう言うと、要は枕元に置いてあったケータイを取り、開いた。
そこにあったのは、総数100件を越える『皆』からのメール。
それを見て、小さく弱々しく微笑んだ。
「ホント……ごめんな」
もしも要が力を失えば、世界を破滅させることがなくなる。
前の運動音痴の彼女に戻ってはしまうが、それこそ普通の中学生として、山本はもちろん沢田や獄寺たちともクラスメイトとして仲良くやっていけるかもしれない。
けれど、後にマフィアの世界に巻き込まれていく凪たちを救うことはできない。
もしそうなれば、要は力を失ったことを酷く後悔するだろう。
傷つく親友を見ているだけの自分に嫌気が差して、最悪の場合、暴走を起こしかねない。
実際に、暴走した奴が破滅させた世界を、オレは知っている。
では、やちるが力を失えばいいのか?
実はこっちも一筋縄ではいかない。
要と対立している存在として、オレはやちるを観察していた。
やちるは、世界を変えに来たのだ。
より勝率が高く、より犠牲者の少ない世界へと。
その為には沢田たちが強くならないといけないと感じ、自らがマフィアの世界に身を投じ高みに立つことで、沢田たちを鍛えようとしていた。
それは、未来編での沢田の持つ後悔を1つでも減らそうと、次第に巻き込まれていく京子たちを守ろうとする結果だった。
そして彼女は、要のことを警戒し苦手意識してはいるが、嫌ってなんかいなかった。
寧ろ、仲良くしたい、彼女のことも守りたい。
そう考えていたのだ。
“誰かを守りたい”
その気持ちが互いに備わっている限り、オレには決めることはできない。
決めるのは、
お前たちでしかない。
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