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『銀河英雄伝説』――骨董品(ガラクタ)――
『銀河英雄伝説』――骨董品(ガラクタ)――
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に精通している提督は帝国軍には存在しないのも事実である。私はこの知識を存分に活かして反乱軍に全力を持ってあたり、敵の戦力を最大限まで削ぎ落とすつもりだ」
「おお!」
「ただし。やりすぎは困りますぞ、閣下」
「分かっている。副官の意見を尊重し、引くべきところは引くとしよう」
「はっ! では総員戦闘配置につけ! そろそろ宿敵ヤン・ウェンリーがやって来るぞ!」
 ドスの効いたコジク副官の太い声が艦橋に響き渡ると、幕僚達が慌しく持ち場へ戻り指揮系統に従って戦闘準備を進めていった。
 お互いの役割を見事に演じた凸凹コンビの司令官と副官が、きびきびと動く部下達を頼もしそうに見つめる。
――★――
 宇宙暦七百九十七年、帝国暦四百八十九年。八月二十五日、午前七時二十分。
 今回、三度目の来襲となる銀河帝国軍ソクディン艦隊。
 対するはケンプ、ミュラー、ソクディン提督の率いるそれぞれの帝国軍艦隊と合計八度に渡って、小競り合いを強いられてきた自由惑星同盟のヤン艦隊。
 両陣営が擁する艦隊がこの日の早朝、九度目の開戦を迎えようとしていた。
「撃て(ファイエル)!」
「撃て(ファイヤー)!」
 二人の艦隊指揮官が、奇しくも同時に砲撃の命令を下す。
 両陣営の戦艦や宇宙空母には、技術的な差がほとんど無いと言ってよい。よって、艦隊の一斉射撃の命令も時間的に差が出ることはあまりない。
 イゼルローン要塞の主砲トゥールハンマーの射程距離のラインを間に挟んで布陣した両艦隊のこの戦闘も、ほぼ前回と同様な形で戦端が開かれた。
「今回は、トゥールハンマーの射程距離など気にするな! 反乱軍が目の前にいれば、その背後にある要塞からの攻撃は有り得ない。常に要塞主砲の射軸上に敵艦隊を置くように攻撃を掛ければ、どれほど要塞に近づこうと大した問題ではない!」
 イゼルローン要塞の弱点を知り尽くしたソクディン提督が、部下達に檄を飛ばす。
「要塞主砲など使い道がなければ、ただの骨董品がらくたに過ぎん。このまま球形陣を保持しつつ、厚みのある砲撃で敵艦隊を押し潰せ!」
――★――
「閣下、敵が攻勢に出てきました」
 フレデリカの言うとおり、旗艦ヒューベリオンのスクリーンパネルに表示された球形陣のソクディン艦隊が、半月陣を採ったヤン艦隊を徐々に押し込んで来る状況が3D画像で表示される。
「それは一大事」
 まったく深刻な表情を見せず、おどけたようにヤン提督が答えた。
「敵はダンスのお誘いを申し込んできた。こちらとしては、安易にOKを出さず、付かず離れず焦らすのが得策だ」
 緊張していた幕僚達の肩から力が抜けるのを見て取り、ヤンが命令を下す。
「フィッシャー少将に伝達! 予定通りに敵を誘い込む。ただし、一気に後退
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