『銀河英雄伝説』――骨董品(ガラクタ)――
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うか」
「はい」
副官のフレデリカが短い返事を返すと、ヤン提督率いる第十三艦隊は銀河帝国のソクディン艦隊を迎撃すべく戦闘態勢を整えていった。
――★――
銀河帝国ローエングラム公ラインハルトによって本作戦の指揮官に抜擢されたソクディンは、まだ三十歳を迎えたばかりの新進気鋭の提督である。
彼は、ケンプ、ミュラー提督がそれぞれ率いる両艦隊と共にヤン・ウェンリーをイゼルローン要塞へ封じ込める勅命を受けていた。
銀河帝国へと通じるイゼルローン回廊の出口に二個艦隊を配置し、残る一個艦隊でヤンが守護する要塞へ進撃するのが基本的構想である。
もちろん戦争の天才ことラインハルトは、たかが一個艦隊でかのヤン・ウェンリーを倒せるとは考えていない。
ケンプ、ミュラーそしてソクディンの三個艦隊に一定のローテーションを組ませ、周期的かつ断続的な戦闘をヤン艦隊に仕掛けるのが目的である。
旗艦ヒュードロクーペの艦橋で黒い短髪、鋭い眼光の若い艦隊司令官が幕僚達に向かって語りかける。黒の軍服に身を包んだ男達が、両腕を後ろに組んだ姿勢でソクディンの言葉を待つ。
「今回の作戦行動について説明する。基本的な構想は前回、前々回となんら変わることはない。ローエングラム公がお立てになられた戦略にのっとり、ケンプ・ミュラー両提督と連携して戦端を開く」
「ミュラー提督の後を引き継ぐ格好ですが、ローテーションのおかげで我が艦隊は燃料、弾薬の補給は万全であります、部下達の休養も十分、士気も高いですぞ」
副官のコジクが白いあごひげを撫でる。長身のソクディンとは違い短小な体躯ではあるが、若い提督を補佐するには十二分な貫禄を備えていた。いわゆる現場からの叩き上げといった風貌である。
二人は奇妙なバランスで絶妙な関係を築いていた。若さと老獪。長身と短小。お互いを認め合うこの凸凹コンビは、帝国の貴族連合軍を次々と撃破する武勲を立てて、ラインハルトから今回の作戦への参加を命じられたのだ。
「うむ。いつも助かる」
コジク副官が上官のねぎらいの言葉にスッと目礼を返すと、ソクディン提督は、幕僚達に向かって声を張り上げた。
「さて諸君。コジク副官がせっかく犬馬の労をしてくれたのだから、私は上官としてそれに応える義務がある」
黒い軍服達が、司令官の意気込みに一瞬どよめいた。
「今回で三戦目だ。そろそろ卿らも小競り合いには飽きてきたのではないか?」
ニヤリと笑う若い上官に幕僚達の顔にも戦闘意欲の火が灯る。
「皆も知ってのとおり、私はイゼルローンに浅からぬ因縁がある。軍人になる前は、技術将校だった父と共にあの要塞で過ごしたこともある。無論、戦いにおいて私怨を持ち込むようなことはしない。だが、イゼルローン要塞の長所や短所について、私以上
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