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『銀河英雄伝説』――骨董品(ガラクタ)――
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には、戦闘直前に彼らが見上げた映像とは異なり、両艦隊の位置が左右逆転した3D立体画像が表示されている。
 飛び交う通信指令を死に物狂いでやり取りし、今まで敵味方の戦況確認もままならなかった新米仕官が、まるで雷に打たれたように驚愕しながら呟いた。
「ま、魔術師ヤン……」
「見ろ、俺が言ったとおりだろ? 奇跡のヤンは、不可能を可能に変えるんだ」
 先輩仕官が、まるで自分のことのように誇らしげに胸を張る。
――★――
「ソクディン閣下。間もなく艦隊再編が終了します」
「うむ。要塞主砲の発射予想時間までには、まだ十分時間がある……」
 イゼルローン要塞のトゥールハンマーが、次に発射可能となる予想時間がデジタル表示でスクリーンに表示されている。ソクディン提督自らが算出して割り出した数値が、百分の一秒単位で時を刻み続けている。
「敵艦隊は?」
「依然、要塞主砲の射程圏外でこちらを待ち構えております。我等の頭を押さえていい気になっている敵の鼻を、今度こそへし折ってやりますぞ」
「……うむ?」
 腕組みをしながら口元に手をやるポーズで上官が思案に暮れる。
「いかがなさいました?」
「何故、ヤン・ウェンリーは先ほど攻勢を掛けてこなかったのだ?」
「単に逃げ上手なだけでしょう」
「では何故、奴等は要塞主砲の射程圏外に布陣したままでいる?」
「相手はケンプ、ミュラー両艦隊と連戦に続く連戦の後。おそらく一息入れたのでは?」
「ならば何故、我が艦隊の損傷がこれ程までに少ない?」
「そ、それは……。我らが将兵の士気も高く、ましてや閣下のイゼルローン要塞に対する見識が……」
「イゼルローン要塞……、一発目のトゥールハンマー……。ま、まさか?」
 愕然となるソクディンにコジク副官が血相を変える。
「閣下!」
「い、いかん。全艦最大戦速! 一刻も早く要塞から離れるのだ!」
「しかし、まだ発射予測時間までは余裕が……」
「謀られた! 一発目のトゥールハンマーは空砲だ!」
「な、何ですと?」
「恐らく敵は、要塞主砲に手を加えたのだ」
「お待ちください。元々あれは帝国軍のもの。トゥールハンマーはブラックボックスで封印されており、何人たりとも手を加えることなどできないはずでは?」
「そのとおりだ。だからこそ、今回の作戦で私は綱渡りのような戦術に踏み切れたのだ。射程を延ばしたり威力を増したりすることは不可能だからな」
 恐怖に顔を引きつらせながらソクディン提督が続ける。
「しかし、トゥールハンマーを改良して、半分のエネルギーで射程距離はそのまま、見掛け倒しの空砲にするぐらいならば……」
「もしや、あの一発目がハッタリであったと? 我が艦隊の損傷が極めて軽微なのは、悪辣な敵の策
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