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『銀河英雄伝説』――骨董品(ガラクタ)――
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測到達ポイントに差し掛かります」
 グリーンヒル大尉の言葉にレーダー担当仕官の航法士が、艦橋のメインスクリーンにイゼルローン回廊の宇宙図を投影する。狭い回廊内に存在する恒星(太陽)の軌道上を周回する要塞を中心に、回廊の反対側にある銀河帝国の版図までが画面に表示された。
「ところで閣下。どうして敵がこの宇宙域へ現れると予想されたのですか?」
「なーに単なる消去法にすぎない。ソクディン提督は、銀河帝国の第一人者ローエングラム公から勅命を受けて今回の戦闘に出てきている。その狙いはもちろん我が艦隊をイゼルローン回廊に封じ込めることにある」
「はい。しかも彼の戦略が狡猾この上ないのは、ケンプ、ミュラーそしてソクディンの三提督が率いる三個艦隊を同時にぶつける短期決戦ではなく、各艦隊をローテーションで運用して断続的な戦闘に引きずり込み、我が方の物資や弾薬を枯渇させるのが狙いだという点ですわ」
「そのとおり。よってソクディン提督は、イゼルローン要塞と回廊の出口が最短距離となるこのポイントに自分の艦隊を布陣する可能性が大きい。その方がケンプ、ミュラー艦隊とのローテーションの回転効率がよくなる……」
「第十八偵察部隊より入電! 『我、敵艦隊発見せり! 繰り返す、我、敵艦隊発見せり!』以上!」
 メインスクリーンに偵察部隊の送信してきた銀河帝国艦隊の位置が立体画像で表示される。それはまさに、ヤンが予想したとおりの宇宙域であった。
「お見事ですわ。閣下」
「うん、問題はここからなんだけどね」
 自分の読みがズバリ的中した喜びを抑えつつ、ヤン提督が頭をかく。
「恐らく敵はイゼルローン要塞の主砲であるトゥールハンマーの射程外ギリギリで艦隊を展開するだろう」
 その声を受けて、メインスクリーンの表示がパッと切り替わる。要塞を中心としたトゥールハンマーの射程圏が、明るいオレンジ色で表示された。
「我々は要塞と敵艦隊との間の一直線上に艦隊を移動させ、敵に正対して待ち受ける」
 自由惑星同盟のグリーンベレー帽を被りなおし、幕僚たちの顔を見回す。
「これで九回目の戦闘だ。馬鹿正直に敵と戦うのも少し疲れた。実際、エネルギーや弾薬の補給も不安な点がある」
「何よりも士気の低下が心配ですな」
 肉弾戦のエキスパートであるローゼンリッター(薔薇の騎士)の隊長シェーンコップ少将が意見を述べる。対人戦闘の猛者は、とりわけ部下の士気に気を使う軍人だ。
「そのとおり。だから今回の戦いでソクディン提督には退場して頂く。イゼルローン回廊は、それほど広いわけじゃない。ケンプ、ミュラー、ソクディンと言った銀河帝国の名優が三人も演じる舞台としては、いささか狭すぎるからね」
 何の気負いも無く自由惑星同盟の魔術師が肩をすくめる。
「では、始めよ
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