『銀河英雄伝説』――骨董品(ガラクタ)――
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ころだな。ところで副官、我が艦隊の被害状況はどうか?」
「現在のところ劣勢の感は否めません」
老副官のコジクが、いったん言葉を切る。
「しかし、将兵の士気は依然高くエネルギー弾薬の補給物資も十分ですぞ。しかも、反乱軍の精鋭部隊であるヤン艦隊の攻撃を真正面から受けているにもかかわらず、失った艦艇は僅か数十隻。まだまだいけますぞ」
「そうか。ではこのまま戦闘を継続する。従来の方針どおり敵の物資を枯渇させる消耗戦に引きずり込め」
「御意」
「ただし、いけるとみたら突っ込むぞ」
「望むところですな」
帝国軍の凸凹コンビが不敵な笑みを浮かべた。
と、その時。レーダー担当の航法士が声を張り上げて叫んだ。
「敵艦隊が陣形を組み替えました。突撃陣形のまま突っ込んできます!」
「馬鹿な! ヤン・ウェンリーは戦術を理解していないのか? 要塞主砲が届かない宇宙域へ飛び出して、一体ヤツは何をするつもりだ?」
「閣下、このまま半月陣を活かして半包囲し、三方向から敵を殲滅しては?」
「いいだろう。もし中央突破されそうになったら、逆に奴等を通してやれ」
「と申しますと?」
「イゼルローン回廊の出口には、ケンプ、ミュラー両提督の艦隊が健在だ。奴等は生きて回廊を抜けることはできん。となれば、ヤン・ウェンリーの採る策は一つしかない」
「中央突破した後、我が艦隊を背面展開で殲滅する……ですな」
コジク副官が白い髭を指で摘みながら意見を述べる。
「そんな机上の策など成功するものか! 中央突破させた瞬間に反転攻勢を掛ければ、こちらが早く仕掛けられるに決まっておる」
「御意!」
ヤン艦隊が決壊する防波堤に流れ込む濁流のごとくソクディン艦隊の中央部へと押し寄せる。
「敵艦隊、速度そのまま! 我が方の陣形を支えきれません!」
オペレーターの悲痛な叫び声が環境にこだまする。
「駄目です! 突破されました!」
ソクディン艦隊旗艦ヒュードロクーペの真横をヤン艦隊の戦艦や空母が怒涛の勢いで通り過ぎる。
「構うな! 中央部を空けて通してやれ。全艦百八十度回頭! 陣形を立て直す。急げ! 奴等が背後で小細工する前に、今度はこっちが突陣形でお返しをしてやるぞ」
毅然とした態度を崩さないソクディン提督が、ヤン提督を上回る戦術で勝利をもぎ取ろうした。
だがその時、オペレーターが銀河帝国司令官の思惑を外す報告をする。
「敵艦隊、我が方の後背で展開及び布陣させる動きなし!」
「それどころか、奴等はどんどん遠ざかって行きますぞ」
レーダーを凝視する老副官の呟きにソクディンが眉をひそめる。
「何? ケンプ、ミュラー両提督が待ち受ける宇宙域へ向かったと言うのか?」
「いえ、そ
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