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『銀河英雄伝説』――骨董品(ガラクタ)――
『銀河英雄伝説』――骨董品(ガラクタ)――
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アムルコートから勢い良く飛び出したポプラン少佐の駆るスパルタニアンが、まるで大空を舞う一羽の鷹のように自由気ままに旋回する。敵艦、味方艦のビーム兵器が交錯する中、彼の単座式戦闘艇が暗黒の宇宙空間で身を捻る。
その刹那、今まで彼の機体が存在した宇宙空間にレーザー光線が駆け抜けていった。
「けっ、当たるものかよ」
 精悍な猛禽と化した同盟の撃墜王の機体が、哀れな獲物たちの群れへと飛び込んで行った。
――★――
「ソクディン提督。要塞主砲の射程圏外に出ました」
 フロントスクリーン上にイゼルローン要塞を中心にした同心円のグラフィックが表示される。
 青く塗られた範囲は、要塞の通常攻撃が届く圏内。それを覆いつくすようにオレンジ色の同心円が表示されている。通常攻撃の約五倍以上もあるエリアは、トゥールハンマーの有効射程圏内だ。
「よし! 卿らはよく耐えた。反乱軍の攻勢もここまでだ。調子づいた敵に逆撃をくれてやれ!」
「はっ!」
「恐らく敵は、進撃速度を落とすはずだ。逃げ上手で臆病者のヤン・ウェンリーは、トゥールハンマーをチラつかせていないと戦も出来ないだろうからな」
「確かに。奥の手があればこそ、奴の戦術も活かされるというものですな」
「うむ。だが、使えない要塞主砲などガラクタに過ぎないことを教えてやる」
「敵艦隊が艦載機を出した模様です」
「では、こちらもワルキューレを出せ! 制宙権を死守して、奴らをトゥールハンマーの射程圏内に封じ込めろ!」
――★――
 ポプラン少佐の薫陶の賜物か、ユリアン・ミンツを筆頭にした自由惑星同盟の新兵達が、三位一体攻撃で帝国軍の艦載機を次々と撃墜していった。
 艦首をエネルギーシールドに覆われて、敵艦からの艦砲射撃も弾き返す大型艦も懐に飛び込まれた艦載機のレーザー攻撃には、ほとほと手を焼く。
 ヤン・ウェンリーの一番弟子たるユリアン・ミンツ軍曹は、首から上しか価値が無いと揶揄される師匠に比べ、パイロットとしての素質も十二分だった。
この戦いにおいても、すでに敵艦載機三機、軽巡洋艦を一機撃沈するという戦果を上げていた。
「第一飛行中隊ユリアン・ミンツ。燃料補給のため一時帰投します」
 ユリアンが愛機を宇宙空母へ向かって反転させた。
「お疲れ様。気をつけてね」
 ヘルメットのスピーカーに女性仕官の優しい声が流れる。
 メルカッツ提督の素早い戦況判断により、艦載機を先に繰り出した自由惑星同盟軍が、徐々に制宙権を支配しつつあった。
          「ちっ。艦隊運動だけでなく、パイロットの質までも敵に水をあけられるとは……」
 ソクディン提督が悔しそうに舌打ちをする。
「申し訳ございません」
「まあ良い。さすがヤン・ウェンリーといったと
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