後輩と北欧の変態
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てはいても、他者に面と向かって言われると少しばかり堪えるものがある。
確かに私は無力だ。先輩の性格だ、きっと武偵という職業を志す事だろう。
だけど、無力な私が先輩と出会ったとして、彼の隣に再び立つ事が出来るだろうか?
「主が一刻も早くあの男に会いたいという気持ちも解る。だが、今のままでは主はあの男と肩を並べる事は出来ないと言っていい」
「確かに貴方の言う通りです。本当は今直ぐにでも先輩の後を追いたい所ですが……私には、その世界で生きて行くだけの力がありません」
オーディンの言葉には確かな真実味が帯びている。
突きつける様に、言葉を放つがそれが現実である為に反論は出来ない。
それを手を握り締め、俯きながら聞いていると、彼は提案があると告げた。
「……提案?」
「そうだ、真綾よ。主には一度別の世界に転生して貰う。主には戦場での戦闘経験など無いし、生き抜く為の術もない。それ故の提案じゃ」
オーディンは虚空より、一冊の文庫本を取り出す。
そうしてそれを、テーブルに置いて此方に差し出した。
「この作品を知っておるか?」
「……ソードアート・オンライン?一応の所、名前と概要だけは知っています」
この作品はつい最近アニメ化したライトノベルだ。
舞台は仮想空間のネットゲーム…確か、開始直後にHPが無くなると現実での死に繋がるデスゲームとなるお話だ。
「そうじゃ、体感型VRMMO。剣と己自身だけが武器となる。主には一度、この世界に転生して貰う」
オーディンはそうして告げる。
一度この世界で自らの身を守る力、世界で生き抜く為の力を身に付けろと。
無論、私の生命の安全は確りと保障する。
その話を聞いて、私は思う。
フェアじゃない。この作品の皆は、命を賭して現実世界に帰還する為に戦っている筈だ。
それなのに、自分は安全な籠の中で大切に守られている。
何かを得る為に、一度力を蓄え付ける。そこに異論はない。
主神の言う事には是と頷く事が出来るが、その内の一つには納得出来ない。
それは世界で生きる者達にとって、冒涜とも言えるだろう。
人の一生とは本来一度きりだ。主神の好きなゲームではない。
セーブとロード、途中から再開などは出来ないなのだ。
こんな体験をしている私が言えた義理ではないけれど、死ねばそこで終わりだ。
「解りました、この世界に転生します。けど―――」
そうして、真正面からオーディンの目を見据えて言葉を紡ぐ。
そこに確かな自らの意思を乗せて。
「生命の安全などという安全装置は要りません」
「……正気か?もしそれでゲーム内で死んでも、生き返る事なぞ出来んぞ」
「ええ、それは充分に解っ
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