そして彼女の道行きは
後輩、晴れない心
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いサークルの扉を開いて中に入る。
其処にはサークルの部室であるのに、誰一人も人が存在しなかった。
その割りに、部屋の至る箇所にはよく判らない物が鎮座していたりする。
「……紅茶でも淹れようかな」
この部室には茶淹れ道具等、色々と完備されている。
それらは先立ち達が置いていった代物だ。
まぁ、押し付けられたと言ってもいいか。既にこれらは私の私物と化している。
「…ふぅ」
淹れたてのインスタントの紅茶に口を付けて、一息吐く。
部屋の窓からは西日が燦々と舞い降りて、室内を黄金色に染め上げている。
少女の艶美な濡れ羽色の髪が、淡く光を帯びる。
このサークルには今は私一人しかいない。
この部屋に一人だけ、その事実に言い知れない違和感を覚える。その感覚が酷く気持ち悪い。
先立ちである先輩達が既に旅立ち、部員兼部長を私は兼任している。
今年で私一人となったが、部員の勧誘等は行っていない。
無口・無表情・無愛想と来ている三拍子で揃っている。
そんな閉鎖的な私が勧誘活動をしても、人など集まらないだろう。
こんな意味のない無意味なサークルよりも、人はもっと有意義なサークルに靡く事だろう。
それに来ないならば、来ないで、別にそれで構わない。
別に部員など欲しくない。今から他人と仲良くしたいとも思わないし、思えない。
それでも、このサークルは人の温かさに溢れていた。
私にとってこのサークルは、気心の知れた人達が、私の好きだった“□■”先輩が籍を置いていた。
不意に。
刹那的に思考を遮る様に、雑音が頭を支配する。
「……っ…アレ」
好きだった?誰が誰を?
本能が訴えかけてくる、危険信号を発している。
―――それ以上は、踏み込んではいけない。
何かを、大切な何かを忘れている様な気がする。
言い知れぬ、空虚感が私を襲う。思考に老け込むと、気持ちの悪い感覚に陥る。
―――ドクンッ
不意に心臓が痛い程に高鳴り、動悸が激しくなる。春の半ば程であるのに、背中を冷ややかな感覚が撫ぜる。
「……帰ろう」
此処に居てはいけない。本能的に、そう何故か感じ取った。息苦しさを感じて。
カップをそっちのけにして、私は急いでその場から離れる為に帰路に着いた。
2
「……ただいま」
自宅に帰宅した頃には、既に夜が更け始めていた。
頭上には薄く、星々が瞬いている。
家の扉を開いて、そう口にする。
だが、帰ってくる返答は何時まで経ってもない。
外門が立て付けられた、二階建ての一般家庭にしては大きすぎる純和風の一軒家。
この家に住む住人は私一人のみだ。他に
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