第一章 〜囚われの少女〜
王宮
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舞台はとある、『花の都』と呼ばれる国。
「姫様、お食事の準備が整いました」
王宮の一室。重い扉の向こうから、幼いが落ち着いている少女の声。
「すぐ行きますから、先に行っておいて」
それに対し分厚い扉を隔て、こもった声で返事をする。
しかしすぐさま、その言葉は冷静に返された。
「レナ姫様、お言葉を返すようですが。それでは女王様が姫様を心配なさいます。姫様のお側を離れようものなら、私は覚悟を決めて参ります」
姫を独りで食事に出向かせるということは、少女にとって一体どんな覚悟が必要なのだろう。
おそらくは、その少女が咎められることに対しての意味。
「………………」
――姫はその意を数秒で汲んだ後、寝起きのような顔を重い扉からのぞかせた。
――
「レナ姫よ。明日はそなたの誕生日じゃ。パーティのスケジュールはわかっておるな?」
赤いテーブルクロスが敷かれた長机の先に、いかにも王族であることを象徴するかのような、小太りの女王が座っている。(いや、結構大柄である)
その姿は欲の塊のような印象を与えられなくもない。
「はい。わかっています、お母様……」
雨に濡れた土のような色をした瞳は暗く、姫は顔色を曇らせていた。
その背丈ほどに長い栗色の髪は、地面を引きずりそうなほど重たく感じられた。
どうやら二人はこの国の姫と女王であるらしい。王の姿がない事から、現在この国は女王の国であることがうかがえる。
女王が座っているのは、象牙色を基調とした食堂の、入り口から一番遠く。
姫は、心ここにあらずといった様子だ。遠くを見るような目で返事をし、食堂の入り口の近く、女王の席から一番遠い席に座った。
双方に挟まれたテーブルの上には、灯のともった燭台がいくつか並べられている。そして、3つ4つと並べられた大皿料理は、通常の二人前より何倍かは多かった。
それが姫の食欲を余計に失わせたかどうかは、元々虚ろであった表情からはあまり伺えない。
「おお、そうじゃ――」
食事の時間は鈍く進むが、女王は何を思ったのか、わざとらしい笑みを浮かべている。
「明日の式典では、あるお方が余興をしてくれるそうじゃ」
「?」
――姫はその意味ありげな微笑みと言葉が気になった。
(あるお方?)
「自らの命をそなたに、捧げたいのじゃそうな」
その言葉に潜むのは、禍々しい悪魔。
「!!?」
姫は突如告げられた言葉に、背筋が凍りつくような嫌な予感がした――それがそのままを意味するならば、何とも悪趣味な余興であるというのだろうか。
女王はレナ姫の顔色をよそに、一方的に語る。
「そなたの仮面を被った悪魔じゃ」
女王は悪趣味な紫色の唇で、通常の一人前を超えた夕飯を食す。
「そなたはただ、明
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