第3話:ハイジャック事件−3
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グの声は普段の優しい声とはまるで違う、
低く冷たい声であった。
「圧倒的な力の差の前に膝を屈する心の準備はできたか?」
そう言ってゲオルグはにやりと嗤う。
それはヴィヴィオが見たことのない父の顔だった。
だが、戦場でのゲオルグを知る人は言うだろう。
"この顔こそゲオルグ・シュミット2佐の顔だ"と。
(ひょっとして・・・パパを本気にさせちゃった?)
ヴィヴィオは初めて己の父に対して畏れを抱いていた。
だが、一方で格闘家としての高揚感も感じていた。
ヴィヴィオは注意深くゲオルグの様子を観察する。
確かに不敵な笑みを浮かべ四肢を脱力させた姿は恐怖に値する。
だが、表情や声色から受ける印象とは違って、殺気は感じられない。
そこにあるのは純粋な闘気のみ。
それに気付いてヴィヴィオは父に対する恐怖を奥にしまい込むことができた。
(かなり真剣だけど、いつもの優しいパパだ)
ヴィヴィオは目を閉じて大きく息を吸い、そしてゆっくりと吐く。
再びその両目が開かれたとき、ヴィヴィオの表情には力がこもっていた。
「・・・いきますっ!」
ヴィヴィオが意気込んで芝生の大地を蹴る。
ゲオルグとヴィヴィオの距離が一気に縮まり、ヴィヴィオは拳を握り振りかぶった。
(いけるっ!)
ヴィヴィオは命中を確信し、ゲオルグに向かってその拳を伸ばす。
その瞬間だった。
ゲオルグがその顔面に浮かべていた笑顔を消し、鋭い目でヴィヴィオの目を
睨みつけたのは。
(えっ・・・!?)
ゲオルグと目が合った瞬間、ヴィヴィオは自分に向けられている目線に
込められているものが何なのか理解できなかった。
だが、常人よりもすぐれた洞察力を持つ彼女は、否応なく数瞬先の未来を
予測してしまう。
(このまま突っ込んじゃ・・・ダメ!?)
だが、彼女の足は既に地面から離れており、彼女の体重と速度が生み出す慣性は
彼女をゲオルグの元に運ぶのに十分すぎた。
(もう、止められないっ・・・ならっ!!)
ヴィヴィオは覚悟を決めてゲオルグの顔に拳を向けた。
その時、ヴィヴィオの目はゲオルグの腰がわずかに下がるのをはっきりとらえた。
次の瞬間、ゲオルグはヴィヴィオに向かって地面を蹴った。
レーベンを握った右手の手首あたりでヴィヴィオの拳をはね上げる。
「っ・・・!」
ヴィヴィオが悔しげな声を漏らす。
しかし、それでゲオルグの動きは終わらなかった。
左の前腕でヴィヴィオの鎖骨あたりを抑えるようにして体当たりをすると、
庭に数本植わっている木の一本にヴィヴィオの身体を押し付ける。
「うっ・・・」
肺から無理やり空気が押し出され、ヴィヴィオが苦しげな声をあげる。
思わず一瞬目を
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