第3話:ハイジャック事件−3
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に急いで帰ってきたんだから。
着替えたら行くからヴィヴィオも着替えておいで」
「うんっ!」
ゲオルグの言葉に、パアっと花が咲くような笑顔を見せたヴィヴィオは、
自分の部屋へと向かって駆けだした。
2階へとあがる階段に足を掛けたところで立ち止まり、ゲオルグの方を振り返る。
「ありがとっ、パパ!」
そう言ってヴィヴィオは階段を勢いよく駆け上がる。
その様子を微笑ましく思いながら見送ると、ゲオルグはキッチンへと向かう。
キッチンへと入ったゲオルグは、夕食を作る妻の後ろ姿を見つけた。
「ただいま」
ゲオルグが声をかけると、彼女は料理の手を止めて彼の方を振り返った。
「あ、ゲオルグくん。 お帰りなさい」
なのははそう言うとエプロンで手を拭きながらゲオルグの方に近寄っていく。
ゲオルグは手に持っていた鞄を床に置くと、歩み寄ってくる妻を抱き寄せた。
そしてお互いの唇を軽く合わせる。
結婚から4年近く経っても、友人たちから熱々と評されるこの夫婦の日常である。
「早かったね」
「まあな。 ヴィヴィオとの約束もあったし」
「楽しみにしてたみたいだよ。ちょっと前からそわそわしてたし」
「判ってるよ。 だからサッサと着替えて行かないとな」
「そうしてあげてよ」
ゲオルグはなのはに向かって頷くと、足元の鞄を再び手にとって振り返った。
と、そこに明るい茶色の髪をした男の子が立っていた。
驚いたゲオルグは踏み出そうとしていた足を急に止めたために
その場でたたらを踏む。
「おっと・・・。 ただいま、ティグアン」
「おとーさん、おかえり!」
男の子は白い歯を見せて笑いながら、ゲオルグに挨拶する。
この幼児こそゲオルグとなのはの間に生まれたシュミット家の長男である。
名をティグアン・シュミットという。
「おとーさん、あのね、きょうね、ぼくおえかきしたんだよ」
「へえ、何を描いたんだ?」
ゲオルグがそう言うと、ティグアン少年は後ろに回していた手を
大きくゲオルグの方に突き出した。
その手には一枚の画用紙が握られていた。
「おとーさん!」
その画用紙には人の顔と思しき絵が描かれていた。
少々バランスの悪い配置となっている目鼻の上には黄色い髪がある。
ゲオルグはティグアンと目線を合わせるように屈む。
「これがおとーさんか。 上手に描けてると思うよ」
「ほんと!?」
ゲオルグの言葉にティグアンは首を傾げて尋ね返す。
ゲオルグはティグアンに向けて微笑みながら大きく頷いた。
「うん。 ママもそう言ってたろ?」
「ママにはみせてないよ。 おとーさんにさいしょにみせたかったもん」
「そっか。 ママにも見
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