反董卓の章
第11話 「……その時私は、盾二様についていけるのかな」
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二様自身を壊しそうで怖いぐらいに……
人が死ぬことを受け入れていても、どこかそれに抗おうとする。
それを弱いと思うのか……それとも強いと思うのか。
弱いと思うのは、諦めなのでしょうか?
強いと思うのは憧憬なのでしょうか?
「盾二様は……やっぱり天の御遣いだよね」
「うん……私もそう思うよ。だから……大好き」
戦士であり、軍師であり、指揮官である人。
強く、聡く、賢人でありながら、人情に厚く、涙もろく、懐が深い。
でも、だれよりも……強くて弱い人。
桃香様は……盾二様の本質を見抜いているんですね。
「……盾二様が居なかったら、私達はきっと桃香様に仕えていたよね」
「……うん。間違いないと……思う。あう……朱里ちゃんは、最初桃香様がいいっていっていたもんね」
「うん……でも、あそこまで本質を見抜ける人とは思ってなかったよ? まあ、人に対してだけなのが玉に瑕だけど……」
「くすっ……そうだね。でも、盾二様がいなかったら……それも美徳としていた、かも」
桃香様は人の善意を肯定する。
だから人は、桃香様と接しているうちに、その美しさに憧れを抱いて集ってくる。
それが桃香様の人徳。
それだけならおそらくは天下一といえる。
でも、人の世はそれだけじゃ収まらない。
汚れた部分を担う人がいる。
最初はそれを、私と雛里ちゃんで担当するはずだった。
でも、私たちの前に、それをやろうとしている人が居た。
それも……桃香様に負けない光を持ったままで。
同じく光に輝きながらも、私達よりも膨大な知識と実行力で桃香様を支えようとする。
その手を血に染めることも厭わずに。
そして……まるで私達を、導くように手を差し伸べてくれた。
だから私達は……その才能に嫉妬することも馬鹿らしく思い。
彼に……すべてを預けて、ともに歩むことを選んだ。
桃香様が誰よりも輝く天の陽の光ならば。
盾二様は……優しく輝き、私達を導く月の光。
だからこそ……その儚さに、不安になる。
その儚い光の弱さが、いつか盾二様を……
『ご主人様』を、悲しみの底に落とすのではないかと。
その時、彼の……誰にでもある、その裏側が溢れてくるのではないかと。
「……その時私は、盾二様についていけるのかな」
「? 朱里ちゃん……?」
雛里ちゃんが戸惑ったように私を見ている。
だけど私は答えない。
願わくば……盾二様の奥に潜むモノが出ませんように。
それはきっと……全てを終わりにさせるもの。
決してそれが目覚めませんように……
そう願うしか、今は術がないのだから。
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