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ゲルググSEED DESTINY
第七十五話 恐怖劇の始動
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――――皆さん、これまで平和の為に共に戦って来てくれたことを私は今一度感謝したい。そして、今まさに戦争の歴史に終止符を打つべき時が来たのだ。しかし、諸君らの多くも思っていることだろう。この計画によって本当に人類に平和が訪れるのかと。約束しよう――――私は戦争を終わらせるために全力を尽くすことを!」

突然開いた回線であるが、これは予め仕組んであった茶番に過ぎない。クラウとはまた別口のミーアの護衛についていた秘書官のような役割を持つ人物によって仕掛けた寸劇のようなものでしかない。一人が議長の言葉に感動したかのようにふるまう事で次々と多くの人々は彼の言葉に感動し、歓声が沸き起こる。

「今まさに、我々は最後の戦いに挑むために敵を討たねばばならないのです!たとえそれが昨日まで共にした隣人であろうとも、かつての英雄であったとしても!自由の無い世界だと問いかけ、争いの火種を持ちこむものに今、我々は人類の成す鉄槌を下さなくてはならない!!」

演説というものにおいて重要なのは演説の内容にあるわけではない。ファシズムのヒトラーは言葉を多様にそして重ねることで大衆に印象を大きく残した。レーガンは体の動かし方を工夫していた。結局、演説というものはそれを聞き入れる人にもよるが詳細な内容、中身などは二の次に近いのだ。
必要なのは過剰とも言える演出。語り方一つで相手は大きく受ける印象を変える。大層なことを言わずともその言葉の伝え方が上手ければ人はその言葉に感動するのだ。

(本気で変えようというのだ……戦争のない世界を彼なら実現してくれるに違いない)

多くの人がそう思う。言葉は何よりも大きな武器だ。人を殺すのはその手に持つ武器でもその引き金を引く指でもない。人が人を殺す最も大きな要因は他者や己を煽動する言葉なのだ。
そうして、一方的とも言える演説によって湧き上がる歓声。演説を終了し、士気の高まりや議長への信仰心とも言える信頼を高めて戦争の準備を整える。しかし、議長は思わずその人々の単純な愚かしさに溜息すらついた。

「君が人を滅ぼしたかったというのも理解できてしまうよ、ラウ。人はあまりにも視野が狭い――――」

デュランダルのその言葉は誰にも届くことなく、自分の私室に響き渡るだけであった。

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