第一章 〜囚われの少女〜
聖なる騎士≪ホーリーナイト≫
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質に笑った。
「ああ……そうよね。あなたは、私をお迎えになった死の神様に違いないわ。……きっと、そう」
男を疑うような言葉を少女は呟く。それはまるで、自分に言い聞かせているかのようだった。
しかし、本当は信じたいという心がそうさせるのだろう――少女はそれをどこかで知っていた。
「……それとも。ここから私を連れ出してくださる、聖なる騎士≪ホーリーナイト≫さま?」
少女のその言葉を聞いたか否か、男は少女の前に躍り出る。
目前を仰いだのは黒マント、その頭に黒いシルクハットの後姿。
「お前が望むというのなら、私はそのどちらにもなるだろう。なぜなら俺は、お前の願望なのだから」
再び同じ意味の言葉。少女は男を信じた。
「……では、私の救世主さま。あなたはどのようなお顔をしていらっしゃるのですか?」
少女は好奇心を含んだ瞳で、黒マントの後姿を見つめる。
「憐れみ? それとも慈しみ? ――私にどのような表情を向けて下さるのですか?」
顔が見えない相手に、心を惹かれでもしたのだろうか。しばらく返事を聞かないままに、その想いを投げかける。
「もし……あなたが死神であるなら、私は、このまま死んでもいいわ。……その方が今の状況を簡単に理解できるもの」
切なげに曇る表情。
「……でももし、あなたが騎士様であるのなら――私を連れ出してくれたとしても、何を希望に世を生きましょう?」
――希望がなければその道を選んだとしても、屍になった事と同じ。
「ああ、でも。救世主さま。そうであることを望んでも……信じてもいいのでしょうか? もしもそうであるというのならば、あなたのお傍に居られることが、私の生きる希望」
騎士≪ナイト≫に守られ、存在を必要とされることが少女の生きる望み。
少女は返事のない、未だそこに動じない男の方へと手を伸ばした。儚く消えてしまいそうな、自らの望みを叶える為に。その望みの先にある、希望を掴みたいが故に。
「私の騎士≪ホーリーナイト≫さま、こちらを向いては頂けませんか?」
しばらくの沈黙の後、男はさらに一歩前へ足を踏み出す。
そして、先ほどとは違って丁寧な語り口で少女へと答える。
「貴女がお望みというならば、私は貴女を振り返ろう。貴女の手を取り、この場から連れ出し、あなたの騎士となろう」
そして――
−第二幕へ−
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