第二章 風のアルビオン
第四話 最後の夜会
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燭台を持って歩いていた。
廊下の途中に、窓が開いていて、月が見えた。月を見て、一人涙ぐんでいる少女がいた。長い、桃色がかったブロンドの髪……。白い頬に伝う涙は、まるで真珠の粒のよう。
その美しい横顔と悲しげな様に、しばらく士郎はじっと見とれていた。
ついと、ルイズは振り向くと。ロウソクを持った士郎に気付き、目頭をゴシゴシと拭った。
しかし、ルイズの顔は再びふにゃっと崩れた。士郎が近づくと、力が抜けたように、ルイズは士郎の体にもたれかかった。
士郎はルイズの頭に手を置き、優しく撫でる。
「なんで……なんであの人達……、どうして、どうして死を選ぶの? わけわかんない。姫さまが逃げてって言ってるのに……恋人が逃げてって言ってるのに、どうしてウェールズ皇太子は死を選ぶの?」
「ルイズと同じだよ……」
士郎が頭を撫でながら言うと、ルイズは士郎の顔を仰ぎ見て、不思議そうに聞いた。
「……わたしと同じ……?」
「自分の中にある、譲れないもののために戦うんだ……」
「じゃあ、残される人たちは? 姫さまのことはいいの? それって結局、自分のことしか考えていないだけじゃない……」
再び士郎の胸に顔を埋め、ルイズは体を震わせている。
「シロウは、彼らの言うことが分かるの?」
「理解は出来る……」
「何でできるの?」
士郎はルイズの頭を撫でながら、窓から見える月を眺め、その輝きに目を眩ませたように目を細めた。
「昔……昔な、俺の知り合いに、似たような人がいたからな……」
「どんな知り合いだったの」
「俺の知る中で最高の剣の使い手だ、とある戦いで共に戦ったことがあってな……その時の俺はてんで弱くて、色々情けないところを見られたよ。俺の最初の剣の師匠でもあったな。……融通の利かない頑固ものでな、負けず嫌いなところもあって、ゲームとかで勝ってしまったら、自分が勝つまで続けさせられたこともあったな……そしてなにより……」
「そして?」
「ああ、そして、とても綺麗な人だったよ」
懐かしそうに話す士郎。しかし、その言葉に込められている思いに気付いたルイズは、士郎から体を離し、顔を伏せながら聞いた。
「……恋人……だったの」
ルイズがいきなり離れたことに驚きながらも、士郎は軽く頬を掻きながら言った。
「恋人……だったのかな? それは……俺にも分からない……な……」
「そう……」
「ルイズ?」
ルイズの様子がおかしいことに気付いた士郎が、ルイズに近づこうとすると、ルイズは伏せていた顔を勢い良く上げ、士郎に笑いかけた。
「ごめんねシロウ、変なこと聞いて。わたし疲れたみたいだから、もう寝るね、おやすみシロウ」
「あっ、ルイズ!」
急に踵を返し、駆け出し
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