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剣の丘に花は咲く 
第二章 風のアルビオン
第四話 最後の夜会
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! よく飲みよく食べよく踊り、楽しむが良い!」

 その言葉とともに辺は喧騒に包まれた。
 こんな時にやってきたトリステインからの客が珍しいのか、様々な人たちが話しかけ、世話を焼き、そして最後には必ず、アルビオン万歳!と怒鳴って去っていくのであった。
 そんな様子を見たルイズは、何か感じることがあるのか、顔を振ると、この場の雰囲気に耐え切れず、外に出て行ってしまう。
 士郎が後を追いかけようと歩き出そうとした瞬間、後ろからウェールズに声を掛けられ足を止めてしまった。

「ラ・ヴァリエール嬢の使い魔の人だね。しかし、人が使い魔とは珍しい。トリステインは変わった国だな」
 
 ウェールズは笑いながらそう言って近寄ってきた。

「いや、トリステインでも珍しいと思いますが」

 士郎は顔に苦笑いを浮かべる。 

「少し話しをよろしいですか?」

 士郎はそう言ってテラスにウェールズを誘うと、ウェールズは笑いながら頷く。
 
「ええ大丈夫ですよ。ちょうど外の風に当たりたいと思っていたところだったので」





 
 
 ニューカッスルのテラスからは、巨大な二つの月がますます大きく、そして一際強く輝いているのが見える。
 そんな中、ウェールズは強く吹く風に当たり、酒で火照った体を冷やすと、グラスに入ったワインを少し口に含み、ゆっくりと士郎に振り向いた。

「それで、シロウと言ったかな? 私に話とは?」
 
 士郎はテラスの扉を閉めると振り返り、姿勢を正すと、ウェールズに尋ねた。

「あなたはなぜ、亡命をしないのですか?」
「シロウどの?」

 ウェールズは士郎の問いに、訝しげな顔をした。

「あなたがルイズに言ったとおり、この戦いに勝つことは不可能でしょう。しかし、一度トリステインに亡命すれば、逆転の目が見えるかもしれない……」
「それは出来ない」
 
 士郎の言葉にウェールズはきっぱりと答えた。

「それはなぜでしょうか?」
「民のためだ」
「民のため……」

 ―――民のために―――
 
 ウェールズの言葉に、士郎は一瞬、過去の記憶を思い出した。自分の憧れであり、誇りでもあった女性を……。
 
「確かにあなたの言うとおり、トリステインに亡命すれば、私は生き残ることができる。そして、私が生きていれば、王党派が滅びるのを免れる可能性もある。しかし、貴族派との争いはますます過激さを増し、終わりの見えない争いが続く。そうなれば、一番被害を受けるのは、本来貴族や王族などに関わりを持たないはずの民たちだ。……ならば、内憂を払えなかった王家は、潔くここで戦い、アルビオンの戦いを終わらせる……王家の死をもって」
「……あなたは、本当にそれでいいのですか? 民のためとあなたは言
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