第二章 風のアルビオン
第四話 最後の夜会
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とがあるのだった。
「殿下……失礼をお許しください。恐れながら、申し上げたいことがございます」
「なんなりと、申してみよ」
「この、ただいまお預かりした手紙の内容、これは……」
「ルイズ」
士郎はルイズに声をかけると、静かに首を振った。
しかし、ルイズはきっと顔を上げると、ウェールズに尋ねた。
「この任務をわたくしに仰せ付けられた際の姫さまのご様子、尋常ではございませんでした……まるで、恋人を案じるような……それに、先ほどの小箱の内蓋には、姫さまの肖像が描かれておりました。手紙に接吻なさった際の殿下の物憂げなお頭といい、もしや、姫さまとウェールズ皇太子殿下は……」
ウェールズは微笑んだ。ルイズが言いたいことを察したのである。
「きみは、従妹のアンリエッタと、この私が恋仲であったと言いたいのかね?」
ルイズは頷く。
「そう想像いたしました。とんだご無礼をお許しください。そう考えると、この手紙の内容とやらは……」
ウェールズはルイズの手にある手紙を見つめると、昔を懐かしむように目を細めた。
「そう……だね。君の想像の通り、これは……昔彼女から渡された恋文だよ。アンリエッタが手紙で知らせたように、この恋文がゲルマニアの皇室に渡っては、まずいことになるだろうね。なにせ恋文の中には、始祖ブリミルの名において、永久の愛を私に誓っているから。知ってのとおり、始祖に誓う愛は、婚姻の際の誓でなければならない。……例えそれが子供の頃の話であっても、ゲルマニアとの婚約を快く思っていない者が知れば、これ幸いにと騒ぎ立てるだろうね。……貴族派の連中はどこにでもいるようだからね……そうなれば、ゲルマニアとの婚約が難しくなる……そして同盟が結ばれる前に、必ず貴族派は、トリステインを襲うだろう……」
「……とにかく、姫さまは殿下と恋仲であらせられたのですね?」
「昔の話だよ」
ルイズは真剣な顔になると、ウェールズに迫る。
「殿下! 亡命なされませ! トリステインに亡命なされませ!」
ワルドがルイズを止めようと近寄ろうとしたが、それよりも早く士郎がルイズに近づきその肩に手を置いた。しかし、ルイズの剣幕は収まらず、ますますウェールズに迫った。
「お願いでございます!わたしたちと共に、トリステインにいらしてくださいませ!」
「それはできない」
ウェールズは笑いながら、しかしきっぱりと言い切った。
「殿下! これはわたくしの願いではございませぬ! 姫さまの願いでございます! 姫さまの手紙には、そう書かれておりませんでしたか? わたくしは幼き頃、恐れ多くも姫さまのお遊び相手を務めさせていただきました! 姫さまの気性は大変良く存じております! あの姫さまがご自分の愛した人を見
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