第二章 風のアルビオン
第四話 最後の夜会
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なのに何でこんなに笑っていられるのよ……。
「して、その方たちは?」
パリーと呼ばれた老メイジが、ルイズたちを見て、ウェールズに尋ねる。
「トリステインからの大使殿だ。重要な用件で、王国に参られたのだ」
パリーは一瞬、滅び行く王政府に大使が一体何の用なのだ? といった顔つきになったが、すぐに表情を改めて微笑んだ。
「これはこれは大使殿。殿下の侍従を仰せつかっておりまする、パリーでございます。遠路はるばるようこそ、このアルビオン王国へいらっしゃった。たいしたもてなしはできませぬが、今夜はささやかな宴があります。是非ともご出席くださいませ」
ルイズたちは、ウェールズに付き従い、城内の彼の居室へと向かった。城の一番高い天守の一角にあるウェールズの居室は、王子の部屋とは思えない、質素な部屋であった。
木でできた粗末なベッドに、椅子とテーブルが一組。壁には戦の様子を描いたタペストリーが飾られている。
王子は椅子に腰掛けると、机の引き出しを開いた。そこには宝石が散りばめられた小箱が入っている。ウェールズが首にかけていたネックレスを外すと、ネックレスの先にある小さな鍵を小箱の鍵穴に差込み、箱を開けた。蓋の内側には、アンリエッタの肖像が描かれていた。
ルイズたちがその箱を覗き込んでいることに気付いたウェールズは、はにかんで言った。
「宝箱でね」
中には一通の手紙が入っていた。
ウェールズはその手紙を取り出し、愛しそうに口づけしたあと、開いてゆっくりと読み始めた。何どもそうやって読まれたらしい手紙は、すでにボロボロであった。
読み終えたウェールズが再び手紙を丁寧にたたむと、封筒に入れ、ルイズに手渡した。
「これが姫からいただいた手紙だ。このとおり、確かに返却したぞ」
「……ありがとうございます」
ルイズは深々と頭を下げると、その手紙を受け取った。
「明日の朝、非戦闘員を乗せた“イーグル”号が、ここを出発する。それに乗って、トリステインに帰りなさい」
ルイズは、その手紙をじっと見つめていたが、そのうちに決心したように口を開く。
「あの……殿下。さきほど、栄光ある敗北とおっしゃっていましたが、王軍に勝ち目はないのですか?」
ルイズは躊躇うように問うたが、ウェールズは至極あっさりと答えた。
「ないよ。我が軍は三百。敵軍は五万。万に一つの可能性もありえない。我々にできることは、はてさて、勇敢な死に様を連中に見せることだけだ」
ルイズは俯いた。
「それには、殿下の討ち死になさる様も、その中には含まれるのですか?」
「当然だ。私は真っ先に死ぬつもりだよ」
ルイズは深々と頭をたれて、ウェールズに一礼した。言いたいこ
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